乗っかったまま、貴美子さんが言った

「あのね、ニノミヤさん、私、付き合わない限りはキスもセックスもしないよ。あなた、どう考えてるの?」

こう問われた。なんという重い質問だろうか! 僕は何と言っていいのだか分からなかったが、女性が自分の上に乗っかって、シャンプーのいい匂いがする状況で首の近くにいる状態は正直大興奮である。しかし、「これ以上やりたいのであれば、私と付き合うと宣言しなさい!」という宣告にはなんとも答えられなかった。

その後も彼女は同様の姿勢で「カレーパンは好き?」だの「鯛茶漬けは好き?」だのよく分からない質問を続ける。そろそろ腕もこってきたため、「とりあえず横に来てください!」とお願いをし、枕を渡し、彼女は僕の上から隣に移った。

結局この晩は何をすることもなく、朝まで二人はグースカ寝たのである。その後、彼女は僕の行きつけのバーでママに対して「ニノミヤさんは本当に女心が分からないの! なんで私のことを無下にするの!」とキレていたと聞いた。すいません、男は鈍感なんです。

Text/中川淳一郎