飲み友達の女性が突然、僕に乗っかって「でもね、キスはしないよ」/中川淳一郎

不思議な駆け引きが過去にあった。そのとき僕は付き合っていた女性と別れ、失意のどん底にあった半年後だった。そこで現れたのが貴美子さんだった。年齢は僕と同じで、日本酒の杜氏をしていると言っていた。

だから酒には相当詳しく、一緒に飲みに行くと「ニノミヤさん、この店で一番あなたに合うのはコレよ」などと紹介してくれた。確かに貴美子さんの見立ては正しかった。いつもおいしい日本酒を紹介してくれた。

何度もサシ飲みをし、名刺交換をしていたのだが、僕の事務所兼自宅にとある夜22時、ピンポーンと鳴った。そのマンションはオートロックではないため、直接部屋の前まで来た。ドアを開けるといたのは貴美子さんだった。

幸いなことにビールはあったので、二人して和室のちゃぶ台で飲み会を開始。お互い、酒は強いため、すぐに6本の缶ビールは終了。すると彼女は「もっと飲もうよ」と言い、近くのコンビニへ酒を買いに行こうと提案。当然これに従い、僕らはコンビニへ。

終電を終わっても飲み続ける、彼女の意図は…

このとき電車はもう終わっており、彼女の意図は測りかねなかった。なるようになれ、とビールを6本買い、再びちゃぶ台で飲み始めた。すべてのビールを飲み終えた後、一応こう聞いてみた。

「もう電車ないですけど、どうするんですか?」

すると彼女は「ニノミヤさんの家に泊まっていい?」と言う。彼女は某女性アナウンサー似の美女であり、僕は好きなタイプだった。当然「どうぞどうぞ」と言う。その後別々に風呂に入り、同じ布団で寝ることになった。彼女は僕のTシャツと短パンを着用していた。

単なる飲み友達だと思っていた貴美子さんだが、隣に寝ているとさすがにムラムラとしてしまう。あちらがどう思ったのかは知らないが、突然乗っかってきた。

「ニノミヤさん、乗っかったよ。でもね、キスはしないよ」
「はい、大丈夫です。キスしないでOKです」

すると彼女は僕をギュっと抱きしめて首の隣に顔をうずめてきた。通常の展開だったらここから濃厚なキッスに入るとこなのだが、貴美子さんはそうならない。ただただ顔をうずめるだけなのである。