魔性の女のたった1つの特徴

それから1年か2年ほど経った後のことです。その日もオジサンと飲んでいたのですが「実はあなたに言わないといけないことがあって」と突然切り出され、そして驚愕の事実を告げられました……。

もう皆さん、お分かりですよね。そうです。「もう別れたから言うけど、実は、あなたと別れた次に出来た彼女って、幼馴染のあのコだったんだ」と言うのです。

え、え、えーーーーーーーー! 腰を抜かすほど、驚きました。だって高校時代の2回はともかく、目の前の相手は、20歳年上のバツイチ男性。こう言ったらなんですけど、20代も後半に差し掛かろうとする女が、恋人として選ぶにはどうなのかな~という相手です。

彼女にファザコンの気はなかったはずだし、いったいどうして付き合うことになったのか……いや、それは至ってシンプルな話です。「友達の恋人」であったから。それ以外の理由があるでしょうか。しかし、なぜ彼女は「友達の恋人」に手を出すのか。それは、いまだに謎に包まれています。

ちなみに彼女はオジサンと別れてしばらくして、別の男性と結婚をしました。2つか3つ年上の、大企業にお勤めの相手です。複雑な思いで祝福しましたが、後日、噂で聞いた話によると、やはり同じ会社の後輩と取り合って、勝ちとった男性だということです。

彼女の魔性をいまだに理解できないわたしですが、ひとつだけ、彼女と他の女友達との違いに気がつきました。彼女は絶対に自分の恋愛の話をしないのです。付き合っている相手の愚痴やノロケはもちろんのこと、そもそも、付き合っている相手がいるかいないかさえも、明言しない。

もしかして魔性の女とは、自分の恋愛事情を他人に明かさない女のことではないでしょうか。周囲からの雑音を耳に入れないからこそ、女友達の恋人を奪うことも出来るのです。

エピローグ

……いや、彼女が胸を痛ませることは、本当になかったのでしょうか。

実はわたしの結婚式の当日、彼女からジャムの詰め合わせとともに、「家に帰ってから読んで」と手紙を貰いました。式の翌日、恐る恐る手紙を開くと、そこには、「オジサンと付き合ったことを、言えなくてずっと気にしていた」という謝罪の言葉が書かれていました。

「オジサンのことだけ?」とか「結婚式にこれを渡すか?」とか、ちょっと思うところもありましたが、過去の男のことはどうでもいいし、今となってはむしろ、他人の男に惹かれる彼女の心に、興味がある。

というわけで、彼女とはいまだに、数年に1度くらい一緒に飲む仲のままです。わたしが腹に一物あることに、彼女が気づいているかどうかはわかりません。でも相変わらず、彼女はどんなに酔っ払っても、不倫願望はもちろんのこと、夫の愚痴やノロケも、口にすることはありません。

Text/大泉りか

初出:2018.07.03

次回は<男が言う「ブス」とは「自分にとって都合の悪い女」のことでしかない>です。
「整形シンデレラオーディション」を観て、「自分の顔がどこが好きか」なんて考えもしなかった自分に気づく大泉りかさん。自分の顔をどう思っているか考えながら思い出したのは、男性に初めて「ブス」と言われた日のことでした。