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  • 2017.06.17

男の辞書には「あざとい」という文字がないのか?バーで出会った女性の手練手管

大泉りかさんがバーで友達と飲んでいると、知り合いの男性が女性と連れ立って入店。せっかくなので一緒に飲み始めると、その女性が何度も何度もグラスのコースターを床に落としてしまうのです……AM読者のみなさんもピーン!ときたかもしれません。自分に注目を集めるこういうあざとさ、男性は気づかないのでしょうか?

何度もコースターを落とす女性

バーカウンターに寝そべる女性のサムネイル画像
AllClear55

 ある晩、夫の経営するバーのカウンターで、男友達と飲んでいた時のことでした。夜半過ぎに、わたしと男友達の共通する知り合いの男性――仮にTとします――が、見知らぬ女性と連れだって入ってきました。Tと会うのは久しぶりだったのですが、女性と一緒にいることもあり、挨拶だけさっと交わした後は、男友達との会話に戻るつもりでした。ところが、軽く交わした近況報告が盛り上がってしまい、そのまま、半ば合流して4人で飲む形になったのです。

 常連が集うようなバーでは、よくあることです。それにわたしたちは、その女性が退屈しないように、出来る限り疎外感を感じないようにと、会話に出てくる人物の説明をしたり、補足を付け加えたり、気遣って会話を進めていました。その最中のことです。

「やだ、落としちゃった」と女性が声をあげて会話を中断しました。なにがあったのかと振り向いてみると、どうやらグラスの底に敷いていたコースターを床へと落とした様子。バースツールはやや高めなので、座ったままで拾い上げるのは少し困難です。一旦スツールを降りればすぐに拾い上げることも出来ますが、女性は座ったまま「うーん、取れない」と必死に手を伸ばしています。その様がいかにも大変そうなので「大丈夫?」とTが気遣い、「うん、もうちょっと……」なんてやりとりがあって、ようやくのこと、拾い上げることが出来て一安心。再び元の話題で盛り上がり直したのですが、またしばらくした後のこと、「やだぁ、また落としちゃった」と、彼女は再びコースターを落としたのです。

 Tは「またか」と笑い、わたしは「コースターって、濡れてるグラスの底にくっつきがちだよね」などとフォローしたものの、彼女はそれをスルーしてまたもや「うーん、取れない」とやっています。これが三回……最初の一回二回はよかったけれど、さすがに三回目となると、イラっとする。いくらなんでも、落とし過ぎじゃないか。その度に会話が中断するし……と、そこでハッと気が付きました。彼女、注目を自分に集めるために、わざとコースターを床に落としてる?

「手練手管」に男は気づいていないのか

 そんなことを疑うのは、わたしの性格がひねくれているせいかもしれません。しかし、あからさまなのです。彼女のことを放って盛り上がっている我々に対する、無言の抗議のようにも思えます。そんな彼女の意を感じたわたしの頭に浮かんだのは「手練手管」という言葉でした。

 手練手管というと「遊女が客に惚れさせるテクニック」が思い浮かびますが、みなさん、お持ちですか? 残念ながら、わたしは持っていません。駆け引きが面倒くさいタイプなので身に着けようと考えたこともなかった……というか、関心すらなかったのです。けれども、よくよく注目していると、女性がそれらしいテクニックを使っているところを、度々目にします。「寒い~、上着貸して」と男性のジャケットを奪い取って着たり、初対面の男性に、オリジナルなあだ名を付けたり、そう親しくもないのに、下の名前を呼び捨てで呼んだり、帰り際に「じゃあね!」と男性に手を差し出して握手を求めたり……その度に「おお、すげい」とあっけに取られ、そして思うのです。そのテク、いったいどこで習ったの?と。

 けれども、そういうテクニックって、男性には本当に効くんですよね。「昨日の夜さぁ、〇〇くんにオチンチンで顔をバシバシーってビンタされる夢を見ちゃった(笑)」とのたまった女性に遭遇した時は「この人、すごいこと言うな」と面食らいましたが、もっと驚いたのは、言われたほうの男性が、まんざらでもない感じだったことです。男性の辞書には「あざとい」という単語がないのか。

 ある時不思議に思って、「女のそういうテクって、受け入れられるものなの? そもそも、テクだって気が付かないの?」と知り合いの男性に聞いてみたところ、「テクであっても、そういうテクを自分にしてきてくれるのが嬉しい」と返ってきて、なるほどと納得しました。騙したつもりが、騙されていてくれているってこともあるのか。男と女の駆け引きは、まことに複雑なものですね。


Text/大泉りか

童貞の疑問を解決する本

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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