また「魔性の女」を彼氏と会わせることに

幼馴染の彼女と再び連絡を取り合うようになった頃、わたしは20歳年上の男性と付き合っていました。ある時、そのオジサンと、近所に住んでいる彼の友達と、焼肉を食べに行こうという話になりました。「せっかくだったら誰か、もうひとり女の子を呼べない?」と尋ねられ、思い当たったのが、幼馴染の彼女でした。というのも、彼女とオジサンの家は、たまたま同じ区内だったからです。

けれど、ひとつ心配もありました。それは、彼女の略奪癖です。だからわたしはオジサンに言いました。「実はその子に、わたしもわたしの友達も、彼氏を奪われてるんだよね」と。

「そんなすごい美人が来るのか!」と色めき立つ彼氏。「いや、すごい美人とかではない。けど、なぜか人の男を奪うんだ」と言うと、「そこまで言うなら、むしろ会ってみたいなぁ」と興味津々です。

選択を誤まった気もしましたが、世の道理がわかっていそうなオジサンに、彼女を見てもらいたい気持ちもあって、結局その日は、焼き肉に「魔性の女」も呼んだのです。

焼肉を終えて彼女と別れた後、「いやぁ、あの子がそんなにモテて、他人の男を次々に虜にするの? 全然わかんないなぁ」と、不思議そうに首を捻るオジサンに、わたしの不安は晴れた気がしました。高校時代のアレはたまたま悪いタイミングが重なっただけで、彼女は「魔性の女」などではなく、ただのどこにでもいる「普通の女」だと思いたかったのだと思います。

その後、数か月もしないうちに、わたしに別の好きな男性が出来て、オジサンとは別れました。オジサンにも、すぐに新しい彼女が出来たと聞いたので、わたしたちはわだかまりなく、数か月に1度くらい会って飲むという友人同士に戻りました。オジサンはたまに「君と会うことに、今の彼女が嫉妬してるんだけど」と漏らすことがありましたが「えー、もう別れてなんもないんだから、関係なくない?」とわたしはまったく気にしていませんでした。