合格スタンプを集めること

わたしにとっての恋愛は、そういう魅力の確認作業だったのだと思う。
巷で言われるモテテクは、くだらなくてもそれなりに効果のあるものがあって、それがウケるたびに安堵しながら、無意識に相手の男性を軽蔑していた。

彼氏ができない期間が続くと不安になった。誰からも魅力を評価されないと、自分が空っぽになった気がして辛かった。あの頃のわたしは、自分自身の評価を他者に丸投げしていた。しかもその他者は、深夜までくだらない話につきあってくれる友達でもなく、作品を評価してくれた教授でもなく、初対面の合コン相手でなくてはならなかった。

あの頃恋愛経験が増えるにつれて、自信がついていく感じがした。でも、それは他人からもらった合格スタンプを見ながらニヤニヤしていたようなもので、自分自身への評価は何ひとつ変わっていなかった。困難に立ち向かう勇気がなく、そういうものから守られるために、媚びたり下手に出るスキルを磨いていたのだ。
小手先のスキルで心を掴んだ男性が、必ずしも困難から守ってくれるわけではないと、本当は薄々気づいていた。それでも自分ひとりで戦うよりは、いくらかマシな気がしていたのだ。

AMで書くのもどうかと思うが、恋愛は人生における必須科目ではないのだと思う。めちゃめちゃしてもいいし、全くしなくてもいい。他人に愛されることよりも、自分を好きでいることの方が、遥かに人生を生きやすくする。

過去付き合っていた男性から、ごくまれに連絡が来ることがある。今では顔すらぼんやりとしか思い出せないこの人が、わたしにくれた合格スタンプの色や形を、もう思い出せない。おそらくあちらもそうだろう。そんな風に思いつつ、わたしは既読無視してLINEを閉じた。

Text/白井瑶

次回は<私は「母性」がわからない。本当に無限にわきあがるもの?>です。
「子供を産むと母親になる」と世間で言われるのは本当でしょうか。母親になれば自然に子供に尽くすようになると言われても、なんとなく腑に落ちなかった白井瑶さん。今回は「母性」について考えてみました。