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ハッピーエンドを疑った先、自分が納得するエンドへ/島本理生✕峰なゆか(後編)

8年にわたって「週刊SPA!」で連載されていた『アラサーちゃん』最終巻の刊行記念!前回に引き続き作者の峰なゆかさんと、今年10月最新刊『夜 は お し ま い』を発表した小説家の島本理生さんによる対談をお届けします。

正しさではなく
誰も傷つけない創作物として、小説を書きたい

峰なゆか×島本理生『アラサーちゃん』完結記念対談レポート

――前回インタビューの最後に、峰さんが「“普通の温度”でエロを作品の中に入れたい」と話していて、島本さんも30代から官能ものを積極的に書き始めたと伺いました。どんな風な考えで執筆されているのでしょうか?

島本理生(以下、島本)

デビューした当時から、恋愛ものを扱うなら“性”を書くと決めていました。特に、思春期の若い女の子を書くときには、“性”の部分も一緒に書くことが大事なんじゃないかなと思って。 若い時って、自分が好きで相手の男性について行っても、翌朝になって“失敗してしまった”と思うことや、経験のなさゆえに不本意な想いをすることがよくあったりして。
その時に、リアルに相談すると「なんでそんなことしたの!」「なんでそんな男についていったの!」みたいに正しさを説く人って必ずいますよね。正しさも必要ですけど、そう責められたからといって余計な抑圧に変わるだけというか。でも、読み物は心の問題に深く切り込むことはあっても、個人の人格を否定するものじゃない。誰も傷つけない創作物としてありたいなと思います。

峰なゆか(以下、峰)

『夜 は お し ま い』の「第1章:夜のまっただなか」に出てくる、無理矢理なわけじゃないけど自分でも若干どうかと思いながらセックスをするのって、“好き”と“気持ち悪い”という感情の近さをすごく感じる話ですよね。あれって100%相手のせいにできることではないじゃないですか。かといって、自分が悪いとも思いたくないし…。あのどう処理していいか分からない感覚って、男の人にはないのかなって思っていたんです。でも色々調査していたら、「お正月に鶯谷デッドボールで女の子を頼んだ時は、女の子がヤりたくもない男とヤったときはこんな感じなのかなって思った」っていう人に出会って(笑)

島本

あの…鶯谷デッドボールってなんですか?

ええ!? 鶯谷のデッドボールを知らない…!! (笑) 常識のように鶯谷デッドボールと言ってしまいました。いわゆる、“ブサイク”と言われる女の子を集めたということで有名な風俗なんです。

島本

そうなんですね、知らなかったです…!(笑) でも引くなら、どうして電話したんですかね…?それがすごく謎です。

それは責めちゃダメなんですよ(笑)

島本

あー!! そうか。私が責めていましたね。

特殊なパターンではあるけど、男の人にもそういう感覚があるんだな〜って。でも、女の子の方が身近に感じる感情ではありますよね。

『夜 は お し ま い』を書いたきっかけは読者のツイート

峰なゆか×島本理生『アラサーちゃん』完結記念対談レポート
島本

私、最近の女性がなにを考えてるのか知りたくて、見ず知らずのtwitterを覗き見るんですけど、恋愛に苦しんでいたり、精神状態が悪くて思い詰めていたりと、シリアスな内容が本当に多い。
確かに、私も若い時によくダメな男に引っかかって自分を責めるというループだったんですけど、この年齢になって客観的に見ると「こんな若くて可愛い女の子が終始自分を責めているなんて…!!」と。だから、そういう女の子たちを書きたいなって思ったんですよね。あとは赤裸々な不倫ツイートの多さにびっくりします(笑)

そうなんですね(笑) 不倫になってくるんですね。

島本

一般の人でフォロワーが15人くらいだと少ないように感じるけど、よく考えたら、15人の前で不倫の日常を公開するってけっこう大ごとじゃないですか。それでも書いてしまうって、辛いことを吐き出せるツールとしてTwitterはやっぱり根強いなと思います。

だって不倫を絶対公言しちゃダメってなったら、全然楽しくないからみんなすぐ止めると思うんです。リアルな友達に言うと、いい加減みんな“ウザイな”ってなっちゃうからTwitterにでも書くか〜みたいな。特に周りに既婚者が増えてくると、単純に不倫している女にムカつきますからね。「おいおい人の家庭を壊してんじゃねぇよ!」って(笑)

島本

確かに。あとは不倫している子って、常に不安があるから自己評価が上がったり下がったりが激しいんですよね。急に良い女風に不倫を語る時もあれば、すごく傷ついている時もあって…聞き手も難易度の高い気遣いが必要になってきますからね。

ただ、30代を過ぎると不倫以外に、波のある恋愛って出来ないですよね。普通の付き合いだと、だいたいイベントはセックスレスくらいで…(笑) だから、不倫なんですかね。

島本

そっか。芸能人とかだと、50代になってから初婚でラブラブ!みたいな変化球もありますけど、なかなか誰にでもできることじゃないですしね。そうすると、確かに後半人生のイベントは不倫が増えるかも。