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私は「母性」がわからない。本当に無限にわきあがるもの?

母性がわからない

赤ちゃんにキスする女性の画像 Public Domain Pictures

「やっぱり女の人はすごい。子どもを産むと母親になる」。
先日、飲み会でそんな言葉を耳にした。話していたのは同僚の男性で、今年に入って子どもが産まれた。社内結婚した奥さんは、現在育休中である。

「子どもを産むと母親になる」。それは「子どもが産まれたら父親になる」くらい当たり前の話だけれど、そんな風に語られたのは初めてではない。
自分のやりたいことを我慢して――時には個人の”やりたいこと”なんて消えてなくなったみたいに、懸命に子どもにつくす母親。子どもに惜しみない愛情を与え、母子は唯一無二の固い絆で結ばれる。母親には母性があるから、そうしたことが自然とできるらしい。

 男性が「母性にはかなわないよね」と言う時の、気持ちの良さそうな諦めを自嘲で包んだあの微笑み。神秘的で、神聖なものを語る時の愉悦。「かなわない」と負けを認めつつ、喜びが滲んだ顔。その時脳裏によぎったのは、高校時代、教科担任だった男性教師の顔だった。

いつかはわかる、女なら

 その先生もまた、小さな子を持つ父親だった。出産を機に専業主婦となった奥さんは、日々子育てに追われているらしい。「やっぱり女の人は違うよ」と言うときの顔には、やはりあの笑みが浮かんでいた。

 どうして女の人は違うのか、当時のわたしにはよくわからなかった。目配せをし、首をかしげるわたしと友人に、先生は笑みを崩さずに続けた。「本能だから。君たちも大人になればわかるよ」と。
そういうものなのかな、と思った。今は現実味がないからピンとこないだけで、いつかは理解できる日が来るのかと。しかし、それから10年以上が経った今でも、わたしには母性が理解できていない。

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