喜ぶ才能が足りない私たちは「申し訳ないな」をぶん投げろ

モテ男のノロケ話を聞いて

[カップルが寄り添う画像] StockSnap

「今の彼女、ほんとうに可愛い。すごく幸せだなって思う」

Aくんの口からそんな言葉が出た時、わたしたちは顔を見合わせた。彼はとてもモテる人なので、いつでも美人の彼女がいた。それでも恋愛に対しては冷め気味で、会う度に彼女が違うような人でもあった。多少酔っていたとはいえ、彼からこういうノロケを聞いたのは、少なくともわたしは初めてだった。

その彼女と付き合いだしてから、AくんのSNSにはたまに彼女の写真が上がる。どれもいやらしさのない穏やかな写真で、幸せが滲んでいる。彼女は可愛らしい子だが、元カノたちに比べれば『わりと普通の女の子』だ。

GWに、友人たちとBBQをした。毎年恒例行事だけれど、ここ数年はそれぞれの家族や恋人なんかも集まって、けっこうな大所帯になっている。今年はAくんの彼女も都合がついて、参加してくれることになった。そしてほんの数時間で、わたしはすごく納得したのだ。「これはAくん、幸せだな!」と。

少女漫画のヒロインかな?

Aくんの彼女……Cちゃんは、歳はAくんやわたしたちの4つ下。とにかく笑顔が明るくて、喜ぶのが上手な女の子だった。

ほどほどに礼儀正しく、ほどほどに手を動かして、楽しそうに皆と盛り上がる。ちょっとした好意を「すみません」でも「いいんですか?」でもなく、「すごい!」「嬉しい!」「ありがとうございます!」と遠慮せず受け取ってくれるので、何でもやってあげたくなるAくんの気持ちがわかった気がした。

わたしのようなコミュニケーション下手は、人の好意を有償だと考えすぎてしまう節がある。例えば、わたしがCちゃんの立場なら、そうニコニコしてもいられないだろう。
焼いた肉を差し出されたら、お礼のあとに「すみません」をつけたくなってしまうだろうし、何か手伝いをしなければと、変に焦ってしまうと思う。年上の彼氏の友人たちに気に入られたい気持ちもあるし、それがミエミエになるのも嫌だし。
打算と気遣いで勝手に消耗し、BBQ終了後には、楽しかった気持ちと同じくらいの疲れがどっとでてしまう。

でも冷静に考えてみれば、自分が小さな好意を差し出す時、見返りを求めている場面はそう多くはない気がする。自分が焼いた肉を美味しそうに食べてくれる人、申し訳なさそうに食べる人。どちらの印象がいいかは明らかだ。