「親ならきちんと見てろよ!」と怒鳴られる。これって仕方がないこと?

大泉りかコラム

中年男性にぶつかってしまった息子

一月の終わり頃だったと思います。その日、わたしは、仕事帰りの夫と合流して出掛ける約束をしていました。3歳の息子と手をつないで、待ち合わせした駅へと向かっている途中、歩くのに飽きた息子が「抱っこ」と要求をしてきたものの、なんせ彼の体重は、もう13キロを超えている。「駅前のコンビニで、お菓子をひとつだけ買ってあげるから、頑張って歩いてくれるかなー?」と励まし&甘やかし、なんとか駅前の、車が滅多に入ってこない広場まで辿りついてふと気を抜いた拍子に、息子がわたしの手を振りほどいてコンビニの入口に向かって走っていったのです。

「ちょっと待って!」と慌てて声を掛けたものの、近くに車の影はないし、入口までの距離は3メートルほど。店内に入ればお菓子売り場の棚に直行することもわかっているので、さほど心配することはない。ちょうど手も自由になったことだし、到着した旨を夫に連絡しようと、スマホを鞄から取り出して液晶に目を落とした瞬間、「痛ってぇなぁ、なにすんだよ!」という男性の怒鳴り声が耳に届きました。

顔をあげてみると、駅に向かう中年の男性の足に、息子がぶつかってしまったようでした。しかし、息子は何も気にすることなく、さっさとコンビニに走っていきます。「これは親のわたしが、代わって謝らなくてはならないやつだ!」と慌てて男性に向かって「すみません」と頭を下げたものの、男性のご立腹は収まらないらしく「親だったら、きちんと見てろよ!」と吐き捨てるようにいって、去って行ったのでした……というエピソードを、バンコクに移住して長い知人たちとの飲み会の席で話すことになったのは、タイでの生活のあらましについて聞いている最中に「医療環境やなんかは、やっぱりちゃんと健康保険のある日本はいいし、子育ての環境もいいと思う」という話が出たからです。