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  • 2017.11.11

同い年の裸の女の子を撮るとき感じた気まずさ…その理由が今ならわかる

ブラック企業の編集プロダクションで働いていた、新卒当時の大泉りかさん。風俗店のwebサイト制作というルーティンワークの退屈な仕事のなか、唯一やりがいのあった仕事は風俗嬢のグラビア撮影のプロデュース。しかし、店舗に出向いて裸の女の子を撮るのは居心地の悪い気まずさがありました。いま振り返って分かるその理由とは?

ブラック企業で風俗店サイト制作

女性が構えるカメラのレンズに裸の女性が映っている画像
by geralt

 先週書いたように、わたしは過去、ベロベロになるまで酒を飲んでからでないとセックスを受け入れる気になれない彼と交際していました。とはいえ、年上の彼との付き合いはいいこともたくさんありました。

 まず第一に、デート中、わたしが財布を開くことがほとんどなかったこと。その頃わたしは、新卒で入社した、風俗系のウェブサイトやキャバクラ雑誌を作っている編集プロダクションを辞めて、フリーランスになり某大手出版社にデスクを置いて仕事をしていました。一応は月給制で、前の会社よりも多少は実入りが増えたとはいえ、それでも月収は二十万円ほどで、もちろん保険などはついていませんでした。なので、少なくともデート代がかからない生活というのはとてもありがたかったのです。

 二つ目は、とにかく自由でいられたことです。わたしの奔放さを知って付き合ったのだから、何をしても咎められる筋合いはないと、わたしはなんの遠慮もせずに、好きなように生きていました。週末になればフェティッシュバーに入り浸り、そこで脱いだり、気が狂うくらいの量の酒を飲んだり、適当な男性を連れて帰ってセックスしたりと、青春を謳歌していました。そして、ある日、別の男性と恋に落ちました――という話の続きは次回にして、今回は年上の彼と付き合う前に時間を巻き戻し、わたしが最初に就職した職場の話をしたいと思います。

 卒業して半年だけ働いていた編集プロダクションは、今でいうブラック企業だったと思います。会社の勤務時間は昼の12時から夜の21時まででしたが、入社して3週間目に同じ部署の先輩に「定時で帰るのやめてください」と言われて以来、終電まで働くことがデフォルトになりました。

 今でも覚えているのは、入社してまだ2日目のこと。以前この会社で働いていたという女性が、残っていた私物を取りにきた際に、新入社員のわたしをお昼ご飯に誘ってくれたことがありました。ガストでハンバーグを食べながら「あのね、あの会社は一刻も早く辞めたほうがいいよ。特に給料の遅配が始まったらヤバいから」とアドバイスされたのです。入社してすぐ、辞めた元社員がそんなことを忠告するなんてよっぽどだし、遅配があるという言葉にも不穏なものしか感じられなかった。憧れの編集業につけたというのに、早くも暗雲立ち込める気分になったのでした。

 おまけに、わたしが配属された部署は風俗店のウェブサイト制作班で、主な仕事は、営業が撮ってくる新人風俗嬢の画像に、目線やモザイクを掛けることでした。正直なところ、とても退屈で、まったくやりたい仕事ではなかった。編集を希望して入ったのに、毎日ルーティン作業に追われて不満を抱いていました。

苦手だった裸の撮影

 ただ、たまに任されるグラビア撮影のプロデュースは、やりがいがありました。グラビアといっても、相手はタレントやアイドルではなく、店が一押しする風俗嬢。撮影場所は主にラブホテルでした。ランクでいえば、休憩で三千円、泊まりで六千円くらいの提携店。要するに、そこそこの付き合いの彼氏と休憩で入るなら安くていいけれど、初めての相手に口説かれて連れてこられたのがここだと、落胆はしないまでもテンションが上がることはまずない、そんな場末感満載のラブホテルです。

 内装も古臭く狭いから、グラビア撮影にはまったく向いていませんでしたが、それでも、あれこれとモデルやカメラマンと話し合いながら作品を作っていくのは楽しかったことを覚えています。よく使っていた池袋のラブホテルには、ディズニーの壁画がある部屋があり、たまたまそこしか空いていないと、映り込まないように撮るのが大変でした。あの壁画のある部屋は、まだ存在するのでしょうか。

 一方で、営業の手が回らない時には、風俗店に出向いて女の子のプロフィール写真を撮ることもありました。当時はまだ、雑居ビルの中などに実店舗があり、その中の小さく区切られた個室で女の子とプレイすることが出来る“店舗型”と言われる店がたくさんありました。その薄暗い個室で、裸の女性をデジカメで撮影し、プロフィールシートを渡して、身長、体重、スリーサイズや性感帯などの項目を埋めてもらうのです。

 同じ撮影でもこっちの仕事は苦手でした。同い年くらいの女の子が裸でいる写真を、こちらは服を着たままで撮ることが、なんとなく気まずかったからです。狭い空間に、服を着ていない女の子と、着ているわたし。相手は裸に慣れているので、おそらくは何にも思っていないだろうけれど、わたしのほうはなんとも言えない居心地の悪さがありました。

 なぜ居心地の悪さを感じたのか。いま考えるとたぶん、「彼女たちは、お金のために好きでもない男性と身体を重ねなくてはならない自分の立場を、不本意だと感じているに違いない」と、わたしが信じていたからだと思います。それはすなわち、過去、自分がお金のために好きでもない男性と身体を重ねたことを、不本意だと思っていたからでしょう。

 今となれば、世の中には単純に、性的好奇心や博愛、職人としてテクニックを極めたいという前向きな理由で風俗に身を投じる人が多くいることを知っていますが、当時のわたしの狭い視野では見えていませんでした。


――次週へ続く


Text/大泉りか

次回は<送別会で大宮のナンパスポットに連れて行ってくれた金髪の彼女>です。
大泉りかさんが新卒で入社し、半年だけ在籍していた編集プロダクション。送別会は開かれませんでしたが、個人的に誘ってくれたのが、当時ネットアイドルをしていた経理の女性でした。昼間のオフィスではヤンキーにしか見えないのに、送別会で連れて行ってくれた大宮では輝いていた、彼女との一日。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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