それでも結婚を取りやめにしなかったのは…

 さみしさと、なぜ自分ばかりがこんな目にという理不尽さと、悪びれる素振りすらない彼への苛立ち。そんなふうに、結婚へのデスロードをひとりで歩かされていることに、どんどんと恨みが溜まっていっていたのだと思います。だから、後日、そのデザイナーの彼の家に行った時は、「そのツケが訪れたぞ」と、まるで復讐するかのような気分に満ちていました。

 刻々と結婚する日は近づいているのに、彼への気持ちは醒めていくどころか、憎しみさえ募っていく。それでも結婚を取りやめにしなかったのは、どうせ彼と別れても、また同じだと考えていたからです。

 これまで付き合ってきた誰とも、本当の意味で分かり合えた気はしなかった。どうせ分かり合えないのなら、相手が誰であっても同じこと。ならば、わたしとの結婚を望んでいる相手と結婚して、その人で足りないところは、自分の裁量で補えばいい……あの頃の状況にあっては、どこまでも自分本位に生きることしか、幸せになる方法が見当たらなかったのです。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は <「家族」になって放り出された「女」を、セフレに満たしてもらっていた新婚生活>です。
「家族」になっても夫から「女」として扱われたい、「女」のままでいたい…そう願う女性は少なくありません。殺伐とした関係が結婚式を挟んでも変わらなかった大泉りかさんは、セフレとの逢瀬に癒しと楽しみを見出していくことになります。