「特定の彼氏を作らず遊ぶ!」という決意を撤回させた最高に好みの男

「特定の彼氏を作らずに遊ぶ」と決意

白い壁の前でポケットに手に入れたまま視線を外す上半身裸の筋肉質な男性の画像 Pexels

 先々週書いたとおり、恋人との同棲を解消したわたしは、ひとり暮らしを始めました。親元を離れた時は弟とルームシェアをしていたし、その次は恋人との同棲だったので、ひとり暮らしをするのは初めてでした。

 心機一転すると同時に、わたしはひとつ、決めごとを作りました。それは「しばらくは特定の彼氏を作らずに遊ぶ」ということです。わたしはわたしの好きなように生きたかったし、その生き方を恋人に理解してもらうのが難しいこともわかった。いつかは結婚をしたいとも思うけれど、「まだ二十代の半ばなのだし」と焦りはまったくなく、ただ結婚までにやりたいことをやりきろうと考えたのでした。

 その頃は、セクハラ上司の元から離れて、同じ社内の男性グラビア誌の編集部に通っていました。華やかでやりがいもあり、同僚たちも面白い人ばかりでした。メインの収入はそこから得つつ、ライターとしてエロ本や実話誌などにちょこちょこと原稿を書いてギャラを得ていたので、以前より少しは余裕のある生活が出来るようになっていました。おまけに、ずっと夢だった小説の出版の話も来ていた。いまが楽しく、将来の展望も開けている。その頃のわたしは、充実感に溢れていました。

 新しく住む家は「新宿から歩いて帰れる場所」ということを重視して探し、初台のワンルームマンションに決めました。もともとはビジネスホテルだった少し変わった物件で、全室ワンルームの作り。洗濯機置き場がない代わりに、格安のコインランドリーが館内にあり、さらには、夏場しか入れないけれど屋外プールもありました。

 家族連れは一切住んでおらず、ほとんどが何かの事務所やオフィスとして使われています。だから夜になるとほとんど無人になることが、住んでしばらくしてわかりました。夜中に洗濯物を抱えて館内のコインランドリーに行くと、時たま黄色い作務衣を着た白髪の老女と居合わせるくらいで、それ以外の住人に会ったことはなく、「もしかしてこのマンションには、わたしとこの老女しか住んでいないのではないか」と考えることもありました。けれども、その寒々しさがむしろ、「女ひとりで都会に住んでいるぞ」という感じがして、わたしはとても気に入っていました。