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  • 2017.12.02

次の男ができるまで別れない「乗り換え形式」は良くなかったのかもしれない

AM読者のみなさんは、恋人と別れるのはどういうタイミングが多いでしょうか?大泉りかさんのように、新しく好きな人ができると乗り換えるスタイルの方も多いかもしれません。しかし珍しく、大泉さんが次の男のあてのないまま別れたあるとき、その心にはいつもと違う奇妙な感情が残りました。

恋人と別れるタイミング

次の列車が来ているホームで抱き合う男女のカップルの画像
by brenkee

 皆さんは、恋人に別れを告げる時って、どういうタイミングのことが多いですか?
「冷めたなと感じた時」、「喧嘩した時に売り言葉に買い言葉で」、「悩みに悩んで決意して」……といろいろあると思うのですが、わたしの場合はほぼ99%の割合で「新しく好きな人が出来た時」です。ついでにいうと、デートはもちろんセックスもすでにその人と済ませている割合が90%くらいです。

 ようするに、わたしは恋人と別れる時はいつも、次の男へと乗り換えているのです。なぜ乗り換え形式なのかというと、前回の最後にちらっと書きましたが、わたしが「何か物事と決別することが苦手なたち」で、「望まない状況にあっても、そこから逃げるのではなく、その場に踏み留まることを正しいと考える傾向にある」からだと思います。つまり、新しい恋の力がないと、だらだらと未練を残してしまって、なかなか別れを決意できない。

 というわけで、25歳を手前に新しい恋に落ちたわたしは、3週にわたって思い出を書いてきた年上の男性に別れを切り出しました。正月明けに彼のお母さまに紹介されたその夜という最悪のタイミングで、わたしは「好きな人が出来ちゃった」と別れを告げたのでした。いま思えばなんて所業。

 けれども新しい恋は無敵です。古い恋人を傷つけることさえ我慢すれば、その先には新しい夢や希望が広がっていることがわかっているから、むしろ心は弾んでいる。「傷つけてしまった」と胸がちくりと痛んでも、そんなものは、ごく小さな痛みでしかありません。

 こうしてわたしは、次の男性に乗り換えました。

相手に合わせず好きなことばかりするわたし

 以前にも書きましたが、新しい彼はフリーライター、同業種の人でした。付き合って3か月かそこらで、アパートを借りて、彼とその飼い猫と一緒に暮らし始めました。

 初めての同棲のことを「おままごとのような生活」と喩えたりしますが、おままごとどころか、「生活」ですらありませんでした。仕事が忙しくて、自炊はもちろん掃除すらしていなかったので、部屋の中は荒れ放題。コンビニの弁当をまとめたビニール袋を台所に向かって放り投げる彼を見て「かっこいー!」と笑ったことを覚えています。
わたしはわたしで、当時は飲みかけのペットボトルの蓋を最後まで閉められないという病にかかっていて、よく倒して中身をこぼしては叱られてましたが、反省するどころか「口うるさいなー」と逆ギレするのがいつものことでした。

 当時のわたしは、相手に自分を合わせようなんて、1ミリたりとも考えていませんでした。ステージに立って脱ぎ続けたのは当然のこと、友人を集めて「ピンクローターズ」というユニットを作り、ぐちゃぐちゃに酔っ払ってそこらの男性のズボンを降ろして公開フェラをしたり、スカ〇ロ作品で有名な某映像監督と飲みたいがために、「打ち上げ」を口実にわざわざスカ〇ロのイベントを企画して、1ショット500円で客に浣腸させたり、『マカロニほうれん荘』という漫画をテーマとしたイベントで身体中の穴を使ってマカロニがいくつ詰められるかチャレンジしたりと、そういうくだらなくてエロいことを命をかけて……というほど大げさではないですが、それなりに真剣にやっていました。

 一緒に住んでいる彼は、そういった活動に一応は難色を示しつつも、わたしのことを尊重してくれる姿勢はあり、いつも苦笑で流してくれました。「好きなことをしてもいいんだ」と調子に乗ったわたしの行動がどんどんとエスカレートしたのは、どこまで許してくれるのか、彼の愛の深さを確かめたかったわけではありません。ただ、そういう遊び方が楽しすぎたのです。

 だんだんと主催するイベントの規模が大きくなり、会いたい人がいればゲストでオファーして仲良くなれる。好きなように生きていることへの全能感に満ちていたわたしはどんどんと調子に乗り、彼がわたしを理解してくれていることに対する、感謝の気持ちがなくなっていきました。そのくせ、自分がしているのは「女だから出来ていること」「女だから面白いと評価を得ていること」だと理解しているから、そのことにひそかにコンプレックスを持ってもいて、どこか荒んでもいた。だから、やがて毎日喧嘩ばかりするようになりました。

乗り換えずに別れたから残った思い

 ある日、一緒にいて言い合いをするのが嫌すぎて、連絡もせずに外泊しました。3日ぶりに戻った家で「もう一緒にいるの無理じゃない? 別れよう」と告げたところ、「僕も同じことを言おうと思っていた」と返ってきました。わたしたちは、まったく同じタイミングで別れを考え、そして別れることになりました。

 その時、珍しいことに、次に乗り換える相手がいませんでした。さらにいうと、こんなふうに、互いに恋心がなくなってしまったことを確認し、「もう仕方がないね」と納得して別れたのも初めてでした。だからでしょうか、わたしの中には奇妙な気持ちが残りました。それは青春を一緒に過ごした相手に対する友情です。
何者かになりたくて、いつも苛立って足掻いていたあの頃のわたしを知っている彼とは、いまでも友達として付き合っています。

 もしかすると、わたしがずっとしてきた「別れるために次の男を作る」もしくは「次の男が出来るまで別れない」というやり方はあんまりよくなかったのかもしれません。なぜなら、別れる前に相手との関係が疲労し擦り切れて、相手に対してなんの魅力も感じないようになってしまうからです。むしろ、ひとりになることへの、さみしさや喪失感や後悔を受け止める覚悟をして、まだ人として相手を好きでいられるうちに別れたほうが、その後の関係はよくいられるのかもしれないと思います。


Text/大泉りか

次回は<元彼が、若い女を「自分の思う女」に誘導するよくいるオジサンになっていた>です。
「元彼との再会」は、心をざわつかせるイベント。しかし、数年前は自分よりずっと大人で何でも知っているかのように見えていた元彼は、いざ再会しても悪い意味で変わらないまま……。そのときようやく、彼がどこにでもいるただのオジサンだったことに気がつくのです。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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