人妻は不倫の夢を見るか?

そして私は身体を上司に投げ出した。洗脳じみた職場のハラスメントと決別するために

23歳の大泉りかさんが転職した先は、パワハラ上司のいる出版社でした。2人きりになったある日突然、目の前で性器を露出するようなひどいセクハラにも遭ったのに、なぜ仕事を辞められなかったのか。ハラスメントが「普通」になってしまう前に、脱出するためには。

転職先のパワハラ上司

毛の長い絨毯の上で白いシャツの女性が仰向けに寝ている画像
cuncon

 先週書いたとおり編集プロダクションを辞めたわたしは、某大手出版社のデジタルコンテンツ部に籍を置くことになりました。ウェブサイトの編集をしつつ、書籍を作るという仕事です。編集部といっても、上司にあたる社員の編集長がひとりと、わたしと同じ常駐フリーランスという立場の男子学生がひとりいるだけの小さな所帯です。

 編集部は、本社とは別のビルにあり、80平米以上あるワンフロアすべてが、わたしの勤めていたデジタルコンテンツ部のオフィスです。別の階には歴史編纂室だとか、辞典を作っている部署だとかが入っていましたが、ビル全体がひっそりとしていて、人の出入りはほとんどありませんでした。たまに用事があって本社に立寄ると、そっちにはたくさんの人が出入りしていて活気があり、「こっちはいいなぁ」といつも思っていました。

 上司はとても怖い人でした。ほぼ毎日のように怒鳴られたり叱られたりして、この頃のわたしは、比喩ではなく本当に、女子トイレで毎日咽び泣いていました。けれども、わたしに 仕事の経験がほとんどなかったのも事実だったので「仕事が上手にできないわたしが悪い」と思い込んでいました。当時23歳だったわたしは「パワハラ」という言葉を知らなかったのです。

 毎朝、重い足取りで出勤する途中、「行くの、やめちゃおうかな」「この電車に乗るの、やめちゃおうかな」と考えていました。それでも辞めるという選択肢を取らなかったのは、就職をきっかけに家を追い出されたわたしには、当然貯金などなく、辞めた途端に困窮することが目に見えていたからです。

 それに、仕事自体は、前の会社よりもやりがいがありました。このままここにいることが、出版で食っていくという夢を叶えるためには最も近道に思えました。だから、わたしはどんなにつらくても、職場に必死にしがみついていたのです。