「家族」になって放り出された「女」を、セフレに満たしてもらっていた新婚生活

“家族”になっても“女”でいたい

ウェディングドレス姿のへの字口をした女性の画像 Scott Webb

 自分と同じ“人妻”という立場の女性たちから話を聞くと、夫との関係に悩んでいる人が、本当に多いと実感できます。セックスレスであること、夫に話しかけてもいつも生返事で、時には無視さえされること。そんな夫の態度に女としてさみしさを感じていても、なぜか世間には「家族になるとはそういうこと」と諭すような風潮があります。
夫にいつまでも恋人時代のような愛情表現やトキメキを求めることは、まるで妻側が成熟していないかのように見なされ、「いつまで独身の娘気分でいるのか」といったふうに浅はかさを笑われることさえもある。

 もちろん、 いつまでも“男”や“女”でいなければならないことに、しんどさを感じる人もいるでしょう。そういう人が“家族”を手にいれることで、恋愛から降りて、新しく心穏やかな生活を送れるようになるのは、とても良いことだと思います。
けれども、いつまでも“女”でいたい女性も少なくないし、そういう人にとっては、恋人であったはずの人に、勝手にその立場を放り出して「家族はこういうもんだから!」と言われると、気持ちの持って行きどころがなくなってしまう。

 2009年の5月31日、日曜日。2003年に付き合い始め、「2年経ったら結婚しよう」と約束し、2006年からは湘南で一緒に暮らしていた恋人と、ようやく結婚式です。でも、前日は目まぐるしいほどの大喧嘩でした。

 彼の友人のひとりに案内のはがきが届いていないことが発覚し、「なんで往復はがきにしなかったんだよ」とまるでわたしのせいであるかのように責められ、「それはふたりで決めたことでしょう。そもそも、わたし側の招待客とは、全員とちゃんとメールでやりとりをして出席の確認をしている。なぜあなたは自分の友達に、それをしなかったの?」と大喧嘩になり、おまけに、どうしても参加してほしいと願うほどの友人ならば、すぐにその場で電話を掛けて、再度出席をお願いして参加の可否を尋ねればいいのに、「いま、別の友達に確認してもらってる」とイライラした様子で、何度も携帯の画面を見ている彼に、こっちもイライラと腹を立てていたところ、オーダーするのが遅くて式には間に合わないと言われていた結婚指輪が出来上がったと電話があり、これ幸いとばかりに家を出たものの、都内へと向かう湘南新宿ラインの中で、「っていうか、なんで指輪を取りにいくのもわたしに丸投げなの?」とまたもや腹が立ってきたところで、セフレとちょうど連絡が取れて、「軽くお茶でもしよう」ということになり、途端に機嫌がよくなったことを覚えています。

 そう……その頃のわたしは、セフレとの逢瀬に夢中でした。セックスはもちろん、わたしの話をうんうんと頷きながら聞いてくれるセフレの存在が、心の拠り所になっていました。“家族”になってしまった夫にはまかなえない女の部分を、セフレに満たしてもらえていたからです。