式をあげても殺伐とした2人

 そうしてこうして、結婚式の当日を迎えました。その日は集まってくれた友人たちのお陰で、最良の日になりました。楽しすぎて、パーティー終了後もまだ飲み足りない気分でしたが、皆は電車で都内に戻るといいます。すると恋人が「今日くらいは行ってきたら?」と送り出してくれたので、そのまま新宿まで行き、数軒のバーをハシゴしました。

 行く店行く店で、一緒に飲んでいた人たちに「今日、この人、結婚したんだよ!」と紹介され、「初夜なのに旦那さんを放ったらかして、こんなところで飲み歩いてていいの?」と驚かれ、「うち、セックスレスなんで」と笑い飛ばし飲んで。翌日の朝だか昼だかになってようやく、名実ともに“家族”となった彼の住む家に戻りました。

 結婚式をあげたからといって、彼が変わることはありませんでした。相変わらずセックスもなく、話しかけても生返事で、「疲れている、時間がない」と家のことは何も協力してくれない。

 でも、わたしは上機嫌でした。結婚式をあげた日の夜、「家にいても、何もないしつまらない」とハッキリと認識したわたしは、その日以降、しょっちゅう、朝まで都内で飲んだくれるようになります。それどころか、昼前に取材で都内に向かい、夜はセフレの家に泊めてもらい、翌日も馴染みの編集部で仕事……というふうに、丸一日以上、家に戻らないことも度々ありました。

「家にいても、ずっとあの人はイライラしていて、しゃべりかけても相手もしてくれず、なにも楽しいことがない」といつも考えていました。窮屈な実家を出て自由を得たはずのわたしは、気が付けば、もっと殺伐とした自分の家庭を作ってしまっていたのです。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は<新婦がセフレのことを好きになってしまったきっかけはバス停の210円>です。
結婚式を挙げた後も、パートナーとのセックスレスに苦しみ、代わりに複数のセフレと気楽で責任のない関係を続けていた大泉りかさん。しかしある日、久々に本当の意味で「大切にされること」を思い出し、恋人をよそに、セフレのことを好きになってしまいました。