つながらなくなったポケベル

 ツーショットダイヤルとテレクラの違いを、あえて挙げるとすれば、テレクラは即日、会ってセックスへ持ち込むのが目的であることが多く、ツーショットダイヤルは、“割り切った関係”になることを目指して、少し長いスパンで親しくなろうとする人、もしくはテレフォンセックスをしたがる人が多いということではないでしょうか。

 なぜそういう傾向になるかというと、テレクラは、男性が実際の店舗の個室で電話を受けるシステムゆえに、援交希望や、火照った体を誰か慰めて欲しいと思っている女性たちは、今いる場所から距離の近い店舗へと電話をかけます。対してツーショットダイヤルは、地域ごとに分かれているダイヤルもあるものの、多くは人妻専門だったりSM愛好チャンネルだったりと、ジャンルのほうが優先されていたためでしょう。
 
 テレフォンセックスを望む相手に対するマニュアルも存在していました。必要なものはグラス、そして水。それをどうするかというと、グラスの中に水を浸してそこに指先を突っ込み、ピチャピチャと音を聞かせて「こんなに濡れてます」とアピールするのです。あわせて喘ぎ声の演技は必要ですが、テレフォンセックスすることになると、10分から15分くらいはそれでもったので、会話をせずに時間を稼げるという意味では楽でした。
 
 そのバイトを半年ほどは続けたでしょうか。ある日突然、ポケットベルがつながらなくなりました。何があったのか気になって、サクラ登録する時に連れて行かれた事務所に足を運んだら、別の風俗店の看板が出されていました。こういう“出会いの場”は本当にあっという間に廃れてしまうのです。
 
 「ポケベルないの、超不便じゃん」と途方に暮れつつも、顔も知らないまま、声だけを使ってセックスの真似事をした男性たちと二度とつながれないことに、なぜか少し寂しい気持ちになったことは覚えています。でも、だからといって、今度は趣味として、ツーショットダイヤルを利用するようになったわけではなく、ただの燃えないゴミと化してしまったポケットベルは、ずいぶん長いこと、わたしの勉強机の引き出しの中に存在し続けたのでした。

Text/大泉りか

次回は<パンティーかぶり写真は、ほぼリベンジポルノ…誰しも可能性があるエロ写真流出>です。
芸能人の不倫相手がパンツを頭に被っている写真の流出がスクープされましたが、スマホがこれだけ普及すると、いくら怖くて注意しているとはいえ、男性も女性も危険性があるのがリベンジポルノ。大泉さんもちょっと近い経験があるようです……。