変わっていく“出会いの場”……時給1000円のツーショットダイヤルの思い出

ツーショットダイヤルとポケベルの思い出

スマートフォンを触る女性の写真

 世の中がどれだけ変わっても、異性との“出会い”を求める男女は後を絶ちません。ツールや状況の変化によって形を変えたり、新しく生まれたりするばかりでなく、だんだんと廃れていってしまうこともある異性との“出会いの場”――そのひとつだった「ツーショットダイヤル」を今回はご紹介したいと思います。

 高校時代、わたしはツーショットダイヤルのサクラのバイトをしていました。ツーショットダイヤルとはテレクラを始めとするテレフォンコミュニケーション、通称テレコミの一種。男性客は自宅の電話から、「ダイヤルQ2」という課金回線にアクセスし、女性はフリーダイヤルを経由してその男性客たちとつながり、二人きりで電話越しの会話を楽しむというサービスです。

 ようは電話を使った出会い系です。そして、当時は高校生であっても、そういったアルバイトをすることが出来ました。池袋の路上には『制服/パンツ/ブルマ買います』『女子高生デートクラブ』という看板が堂々と立っていた、いろんなことが灰色だった時代です。

 ツーショットダイヤルの時給は1時間1,000円で、実際に話した時間の合計額が毎月振り込まれる契約でした。基本的には自分の空いている時間に電話すればいいのですが、店側から「男性客があぶれていて、ヘルプして欲しい時に連絡するため」という体でポケットベルが貸し出されていました。

 いつでも好きな時に自宅で、適当にオジサンと話をするだけで稼げる、という条件は、「今日はバイトがあるから」と友達の誘いを断ることを惜しく感じていた遊び盛りのわたしにとって、とても魅力的でした。しかし、わたしの一番の目当てはポケベルでした。というのも、まだ携帯電話が普及していなかったあの時代、友達と連絡を取るためのツールとしてもっともメジャーだったのはポケベルだったのです。けれども、我が家の両親は「そんなものは高校生に必要がない!」というしつけの方針を取っていたため、いくら頼んでも、ポケベルは持たせてもらえませんでした。だからこそ、放課後、池袋の路上をフラフラと歩いている時に「君、ポケベル持ちたくない? いいバイトがあるんだけど」という誘いに二つ返事で乗ったのでした。