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  • 2017.09.09

変わっていく“出会いの場”……時給1000円のツーショットダイヤルの思い出

マッチングアプリや街コン、現代らしい出会いの場はたくさんありますが、時代がいくら変わろうとも男女が「出会おう」としているという点は変わらないもの。往年の出会いの場「ツーショットダイヤル」のサクラを経験したという大泉さん、そこで感じた男性の心理とは?

ツーショットダイヤルとポケベルの思い出

スマートフォンを触る女性の写真

 世の中がどれだけ変わっても、異性との“出会い”を求める男女は後を絶ちません。ツールや状況の変化によって形を変えたり、新しく生まれたりするばかりでなく、だんだんと廃れていってしまうこともある異性との“出会いの場”――そのひとつだった「ツーショットダイヤル」を今回はご紹介したいと思います。

 高校時代、わたしはツーショットダイヤルのサクラのバイトをしていました。ツーショットダイヤルとはテレクラを始めとするテレフォンコミュニケーション、通称テレコミの一種。男性客は自宅の電話から、「ダイヤルQ2」という課金回線にアクセスし、女性はフリーダイヤルを経由してその男性客たちとつながり、二人きりで電話越しの会話を楽しむというサービスです。

 ようは電話を使った出会い系です。そして、当時は高校生であっても、そういったアルバイトをすることが出来ました。池袋の路上には『制服/パンツ/ブルマ買います』『女子高生デートクラブ』という看板が堂々と立っていた、いろんなことが灰色だった時代です。

 ツーショットダイヤルの時給は1時間1,000円で、実際に話した時間の合計額が毎月振り込まれる契約でした。基本的には自分の空いている時間に電話すればいいのですが、店側から「男性客があぶれていて、ヘルプして欲しい時に連絡するため」という体でポケットベルが貸し出されていました。

 いつでも好きな時に自宅で、適当にオジサンと話をするだけで稼げる、という条件は、「今日はバイトがあるから」と友達の誘いを断ることを惜しく感じていた遊び盛りのわたしにとって、とても魅力的でした。しかし、わたしの一番の目当てはポケベルでした。というのも、まだ携帯電話が普及していなかったあの時代、友達と連絡を取るためのツールとしてもっともメジャーだったのはポケベルだったのです。けれども、我が家の両親は「そんなものは高校生に必要がない!」というしつけの方針を取っていたため、いくら頼んでも、ポケベルは持たせてもらえませんでした。だからこそ、放課後、池袋の路上をフラフラと歩いている時に「君、ポケベル持ちたくない? いいバイトがあるんだけど」という誘いに二つ返事で乗ったのでした。

電話の向こうを軽蔑していたわたし

 ポケベル無料貸与という条件に惹かれて始めたツーショットダイヤルですが、わたしはあまりいいサクラではありませんでした。なぜなら、電話の向こうの男性たちを頭から軽蔑していたからです。「キモいオッサンと話してやってる」くらいに思っていたので、非常に愛想が悪かった。おまけにしゃべり方と声も、現在の酒焼けしたスナックの熟練ママボイスよりは幾分マシとはいえども、まったく可愛らしさがなかった。

 けれども、当時のメディアが紹介していた女子高生像が、“ナマイキな少女”とされていたせいでしょうか。年齢を聞かれた時に「えー、17さいー」とつっけんどんにいうと、相手方はステレオタイプを思い浮かべてくれ、「コギャルなら仕方ない」と、勝手に納得し、その上で、それなりにその珍獣に対して、真摯にコミュニケーションを取ろうと努力してくれていたように思えます。

 一方でわたしは、男性たちに心を寄せる気はまるでありませんでした。本来ならば、サービスをしなくてはならないのは、時給1,000円(に加えてポケベルを無料貸与)を得ているわたしのほうです。反対に彼らはわたしと話をしているその瞬間にも、通常の通話料からすると破格とも言えるお金を払っている。なのに、彼らのほうが下手に出る。彼らの目的はいったい何なのか。

つながらなくなったポケベル

 ツーショットダイヤルとテレクラの違いを、あえて挙げるとすれば、テレクラは即日、会ってセックスへ持ち込むのが目的であることが多く、ツーショットダイヤルは、“割り切った関係”になることを目指して、少し長いスパンで親しくなろうとする人、もしくはテレフォンセックスをしたがる人が多いということではないでしょうか。

 なぜそういう傾向になるかというと、テレクラは、男性が実際の店舗の個室で電話を受けるシステムゆえに、援交希望や、火照った体を誰か慰めて欲しいと思っている女性たちは、今いる場所から距離の近い店舗へと電話をかけます。対してツーショットダイヤルは、地域ごとに分かれているダイヤルもあるものの、多くは人妻専門だったりSM愛好チャンネルだったりと、ジャンルのほうが優先されていたためでしょう。
 
 テレフォンセックスを望む相手に対するマニュアルも存在していました。必要なものはグラス、そして水。それをどうするかというと、グラスの中に水を浸してそこに指先を突っ込み、ピチャピチャと音を聞かせて「こんなに濡れてます」とアピールするのです。あわせて喘ぎ声の演技は必要ですが、テレフォンセックスすることになると、10分から15分くらいはそれでもったので、会話をせずに時間を稼げるという意味では楽でした。
 
 そのバイトを半年ほどは続けたでしょうか。ある日突然、ポケットベルがつながらなくなりました。何があったのか気になって、サクラ登録する時に連れて行かれた事務所に足を運んだら、別の風俗店の看板が出されていました。こういう“出会いの場”は本当にあっという間に廃れてしまうのです。
 
 「ポケベルないの、超不便じゃん」と途方に暮れつつも、顔も知らないまま、声だけを使ってセックスの真似事をした男性たちと二度とつながれないことに、なぜか少し寂しい気持ちになったことは覚えています。でも、だからといって、今度は趣味として、ツーショットダイヤルを利用するようになったわけではなく、ただの燃えないゴミと化してしまったポケットベルは、ずいぶん長いこと、わたしの勉強机の引き出しの中に存在し続けたのでした。

Text/大泉りか

次回は<パンティーかぶり写真は、ほぼリベンジポルノ…誰しも可能性があるエロ写真流出>です。
芸能人の不倫相手がパンツを頭に被っている写真の流出がスクープされましたが、スマホがこれだけ普及すると、いくら怖くて注意しているとはいえ、男性も女性も危険性があるのがリベンジポルノ。大泉さんもちょっと近い経験があるようです……。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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