自分を不幸にするのは自分だけ

 結婚したって離婚できるし、離婚しなくたって葛藤は色々ある。だから残念ながら結婚したって簡単には一丁上がれない。
思うに、結婚に限らず、出産も就職も、そして離婚も、すべて、平坦な道の途中でたまたまぶつかる、ちょっとしたY字路のようなものだ。
どっちに進んでもいいけど、それじゃ、って感じで結婚する方に進んだら、進んだ先の世界が広がる。
同じように別の道に進んでいたとしても、それはそれでまた別の世界が広がっているだけの話。

 夫と別居した途端、たくましく自立への足場を固め始める妻。
夫がどう思っていたか知らないが、えてして男性とは面倒事を嫌いながらも、自分を欠いても平常運行する世界を目の当たりにするとたちまち心を折ってしまう繊細な生き物であって、改めて思えば私に妻としての可愛げはまるでなかった。
そんなことは百も承知だが、いかんせん私は我慢強くなかった。一刻も早く陽気に生きたかった。
だから最も手近にあった道をグングン進んだ。
進んだ先にはたくさんの新しい出会いと就職、独立、そして離婚があった。
正解か不正解かは誰にも決められないけれど、少なくとも現在までの道中、無数の刺激と手応えに満ちていた。

 結婚や恋愛に縁遠かったり、出産の機会がなかったり、あるいは離婚したりすると、ときに世間は女性に身勝手な不幸の烙印を押してくる。
…もしくは、そんな気がすることがある。だけど、そもそも目の前にない道には進めないんだからどうしようもない。
どうしようもないことに絶望するより、目の前にある道をちょっとでも進んだほうがまだ楽しい。
自分を不幸にするのは無責任な他人の声ではなく、自分を楽しませる努力を怠る自分だけだ。

私たちの欲望は明日を刺激的にする活力となる

 冒頭で紹介したan・an、AERA、そしてCREA。
この道はいつか来た道…そんな思いで胸を熱くしていると、例によってうちにご飯を食べにやってきていた男の子が呆れたように言った。

「女の人って大変ですよねえ」

 ええ、全くその通りです。私たちの欲求はとどまるところを知らないし、結婚したって何したって終わらせてくれない。
だけど「逃げられない」なんて絶望する必要は全くない。
なぜなら終わらない欲望とは、明日をもっと刺激的にするための活力に他ならないから。
私たち、死んだ様に生きていないからこそ望み、いつまでも冒険を続けるのだ。

 見えない人の声に惑わされることなく、やれることをやりたい放題。そうやって、他でもない自分自身を、誰より楽しませてやればいのだ。

Text/家入明子

※2015年4月22日に「SOLO」で掲載しました