30歳からの処女航海。結婚と仕事、そして離婚

結婚→家族が苦しい→おひとりさま
私のことではないですか

特集:「結婚したら負けかなと思っている」サムネイル画像 Mateus Lunardi Dutra

 今わたしの手元にある3冊の雑誌。

an・an 特集:大人の恋の見つけ方
AERA 特集:家族はなぜ苦しいのか
CREA 特集:東京ひとりガイド

 そもそも恋がみつからないan・anと、結婚して家族になったものの苦しいAERA、そしてもういっそひとりで楽しむことにしたCREAである。
この流れには既視感があるぞ、と思った。

 幸いにも見つかった恋を勢いでものにして結婚。
子供をもうけて家族として幸せになったはずなのに、次第に夫婦の間にはわかり合えないグレーゾーンが広がっていく。苦しみを経てついに離婚。
ついには腹をくくってひとり(ときどき子供ふたりと)で東京を楽しむフェーズに…そうだこれ、ほかでもない、私のことではないですか!

 いっそのことan・anとAERAとCREAと私とで顔をつきあわせて語り明かしたい。一人でいるのは寂しい。
しかし誰かとずっと一緒にいるのも、それはそれで苦しいんだよね、と。

 数年前、私がまだ専業主婦だった頃のある日。地元福岡の友人が、東京の我が家に遊びにきていた。
当時未婚かつ恋人のいなかった彼女は、夕飯のあと、すこしお酒が回った頃に、わたしのことを「うらやましい」と言った。彼女の目からは、結婚して、子供もいるわたしが「一丁上がり」の状態に見えたんだろう。

 だけどその実、当時のわたしは漠然と後ろめたさを感じていた。
なにしろ18歳のときに結婚したもんだから、ちゃんと仕事をしたことが一度もなかった。社会の一員になりきれていないようで、絶えず誰かに申し訳ないような気持ちでいた。

 そこに輪をかけて当時、夫との関係もうまくいっていなかった。
夫は結婚直後に勤めていた会社をやめて起業したのだが、これが予想外にうまくいって、私たちを取り巻く環境は激変していた。
住む場所は福岡から東京に変わり、夫の収入は結婚当初の約10倍になっていた。帰宅は決まって深夜から朝方となり、どこで調達したのか気づいたらDOLCE&GABBANAと印字されたパンツをはいていた。

「大好きなもの:シャンパンタワー」というような風情を感じさせ始めた頃に「最近おかしいんじゃないの」と私は言った。
けれども夫は、自分は変じゃない、むしろ私の方こそ母となって変わってしまったのだと言う。