僕が女になっても、“わたし”の愛は変わらない『わたしはロランス』

 彼氏がある日突然、「女になりたい」って言い出したらどうしますか?
誰しも男・女を選択して生まれてきたわけじゃない。“ぼく”だって“わたし”だって、一人称は定まっていない。男でも「わたし」って言うし、女だって「ぼく」って言う人もいるでしょう。

「わたしはロランス」
さて、この人は男なのか女なのか。本当はどちらもでもいい。わたしはわたしであることに変わりはなく、その人はロランスであることに間違いないのだから。
24歳の恐るべき才能が描くのは、一組の男女(?)が“わたし”と“あなた”の関係を貫き通す愛の物語です。

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 監督のグザヴィエ・ドランは若干24歳にしてカンヌ映画祭の常連であり、あのガス・ヴァン・サント監督が惚れ込む才能の持ち主。そしてなんとイケメン。顔ファン出現必至な映画監督は世界でもなかなか類を見ないと思います。

 女になりたい男・ロランスを演じるのは『ぼくを葬る』のメロヴィル・プポー。中性的には程遠い男らしいルックスの彼ですが、映画を観ていると次第に女性にしか見えなくなってくる魅力に注目です。
戸惑いながらも彼を愛いそうとする恋人のフレッドをロザンヌ・クレマンが演じ、本作で2012年カンヌ国際映画祭ある視点部門で最優秀女優賞を獲得しました。

ストーリー

 ロランス(メロヴィル・プポー)は国語教師をしながら小説を書いている。彼は情熱的な女性フレッド(ロザンヌ・クレマン)と恋愛し、互いに愛し合う日々を送っていた。だが、フレッドに秘密を打ち明けたことで二人の運命は左右される。

「僕は女になりたい。体を間違えて生まれてきてしまったんだ」

 フレッドは激しく動揺するが、恋人としてロランスの一番の理解者でいるために一緒に生きていくことを決意する。だが、社会的に排他され、世間の冷たい視線を浴びる日々が続く中でフレッドは次第に鬱状態に陥っていく。
やがてフレッドはロランスの元を去り、ロランスは別の女性とともに暮らすことになる。
それでも、ロランスはまだフレッドを愛し続けていた。そしてある日、二人は再会を果たすことになる――。