同世代の繋がりだけではキツイ!崩壊する老後の生き方/ジャーナリスト・佐々木俊尚さん(後編)

前編で佐々木俊尚さんは、従来の会社や家族といった「共同体」が崩壊し、ライフスタイルが似た者同士でゆるく繋がる社会がやってくると指摘していた。
後編では、その従来の「共同体」はなぜ崩壊しつつつあるのか、その中でどう生きていくべきかを伺った。

従来の「強い共同体」が崩壊しつつある

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――なぜ、このように共同体の形が今変わりつつあるのでしょう?

佐々木俊尚さん(以下、佐々木):終身雇用制度が機能しなくなってきているなど、今までのシステムが崩壊し始めているからです。

高度経済成長期、人がどんどん都会に出てくるようになると、農村という共同体から切り離されたため、人々は企業という新しい共同体を求めました。ところが今、企業にぶら下がって生きることが難しくなり、新しい共同体を求める人が増えているのです。

――共同体を求めるのは日本人独自の気質なんでしょうか。

佐々木:諸説あるのですが、歴史学者の與那覇潤さんの「中国化する日本」によると、室町から戦国時代にかけては非常に開かれた社会で、流動的な関係性だった。それが江戸時代になると地域に縛られるようになって、今の日本のムラ社会は江戸時代から400年くらい続いているんです。
これがもう一回壊れて、17世紀以前の社会に戻るかもしれないわけです。

歳が同じ、会社が同じ それだけで繋がるほうがしんどい

――17世紀以前の日本、ですか……。なんだか途方もない話のような気がしてしまいます。

佐々木:30代くらいだったら将来のことなんて考えられないと思いますが、もう今までの日本人がイメージする「老後」というものは崩壊しています。

昔は定年して自由な人生が待っていて、退職金がたくさんあり、年金もたくさんもらって、自由にあちこち行って、という感じだったんですが、今は年金も退職金もいくらもらえるかわからないし、子どももいなければ孫もいない、そんな人ばかりです。
かつての老後のイメージはほぼ消滅していると考えたほうがいい。
そうすると、どうなると思いますか?

――うーん……、どうなるんでしょう。

佐々木:多くの人は、定年したあとも何らかの形で働くことになるのだと思います。
そうなったときに、一番いいのは、年齢関係なしに友達がたくさんいることです。
違う世代の人とゆるく繋がっておくと、仕事を紹介してもらえることもあるでしょうね。

――日本は上下関係の意識が強いですし、年齢差があるとなかなか「友達」という感じになりにくいですよね。

佐々木:逆に、歳が同じだとか、たまたま同じ会社だとか、そういった縁があるだけで共同体が形成されるほうがしんどいことなのです。

社会学者の山岸俊男さんが「信頼」とはどういうことかについて様々な著書で論じているのですが、山岸さんが言うには、同じ村にいるというだけで信頼するのは本来の信頼ではなく、やくざの世界における「信頼」と似ている、と。
やくざ同士というのは本心から信頼しているのではなく、裏切ると指を詰めなければならないから裏切れないだけですよね。

コミュニケーション能力がなくても無縁の人と繋がれるのか?

――ただ、バックグラウンドの違う知らない人と繋がるというのは、誰にでも簡単にできることなのでしょうか? かなりコミュニケーション能力が必要な気がします……。

佐々木:それは今が過渡期だからです。
共同体の安定、共同体の崩壊、共同体の模索、と歴史が繰り返される中で、新しい共同体の形を模索している段階にいます。ここ数年はずっと、先陣をきってコミュニケーション能力の高い人が様々な形を試している状態なのです。

こういった様々な試みの中からいずれ成功モデルが現れるはず。そうすれば、コミュニケーション能力がなくても、誰もが真似できるようなものが社会に浸透していくはずです。

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佐々木俊尚さんの言うところの「弱い繋がり」とは、あくまでも「自分は一人で生きている」という自立心を持っているのが前提のように思う。
会社や村社会などの既存の「強い繋がり」における同調圧力は、誰しもが一人になるのが不安だからこそ生まれる。

私自身は、そういった同調圧力に巻き込まれるくらいならば、誰とも関わらないで生きたほうがましである、と思っていた。けれど、必要な分だけ誰かと繋がれる、そんな都合のいい共同体(弱い繋がり)ばかりになるならば、どんなに生きやすくなることだろう。
願わくば、生きている間にそのような社会になりますよう。

(取材・文/朝井麻由美)

(プロフィール)
佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、月刊アスキー編集部を経て、フリージャーナリストとして活躍。ITから政治・経済・社会・文化・食まで、幅広いジャンルで、綿密な取材と独自の視点で切り取られた著書は常にベストセラーとなっている。『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)など著書多数。

※2017年4月13日に「SOLO」で掲載しました