『魔女の宅急便』から28年後。現代の“魔女”は我々をどう導くのか『メアリと魔女の花』

『メアリと魔女の花』サムネイル画像 2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 空を飛びたい。ワープしたい。物を動かしたい。――かつて描かれてきた“魔法”の数々から、誰でもその能力に一度でも憧れたことはあるだろう。

 しかしいざ力を得た時、それを憧れのままでいられるのだろうか。力を持つことが絶対とは限らない。主人公・メアリが織りなす悲喜交々が、その答えを垣間見せてくれる。

『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』で、国内外で高い評価を得る米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後、第一作目に選んだ題材は、かつて師である宮崎駿監督が描いた題材と同じ“魔女”

 声の出演には杉咲花、神木隆之介、満島ひかりといったこれからの日本映画界を牽引する才能が集結し、天海祐希、小日向文世、大竹しのぶといったベテラン俳優たちが脇で支える。

「ジブリっぽいよね」では済まさない

『メアリと魔女の花』サムネイル画像2 2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 メアリはどこにでもいる普通の女の子。少し不器用で失敗もするが、それでも明るく過ごしている性格に親近感を覚える。彼女が最初から大きな力を持っているわけではないからこそ、観客はメアリと同じ視点で魔女の花《夜間飛行》の効力に驚き、一緒に旅をすることができる。

『メアリと魔女の花』サムネイル画像3 2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 やがて導かれる雲の上の魔法学校のビジュアルインパクトは、多くの人々が慣れ親しんできたジブリの世界観を匂わせる。とはいえ、米林監督がジブリではなくスタジオポノックの長編第一作に選んだ覚悟は、「ジブリっぽいよね」って感想では済まさない。登場人物の秘密や、暴かれる謎を畳み掛けるように明かし、スピード感溢れる展開に既視感は見当たらない。

 魔法によって変身させられた動物たちがバラエティに富み、人間以外の生き物が魅力的に映されるのが印象に残る。彼らは魔法の力に目が眩み、欲に限りないのない人間たちとは違う。生きることに目的を持たず、ただ生きているというシンプルな佇まいがいかに美しいかを示すかのようだ。