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  • 2017.07.22

「死んでも美しくあり続けたい。」――あるトランスジェンダーの死と波乱に満ちた人生『ダイ・ビューティフル』

「ミスコンの女王」と称されたトランスジェンダーのトリシャの遺言から、埋葬前の儀式で毎回異なるセレブの装いをさせるために、残された友人たちが奮闘する——。2016年東京国際映画祭で受賞したフィリピン映画。

『ダイ・ビューティフル』画像1枚目
© The IdeaFirst Company Octobertrain Films

 死んだら姿形は変わり、意識も無くなる。当然のごとく、生きていた頃の美しさなんて土に埋められるか、燃やされてしまう。
でも、トリシャは違う。彼女は死んだ後も美しく、ビヨンセにもケイティ・ペリーにも、アンジェリーナ・ジョリーにもジュリア・ロバーツにもなる。

 これは美しくあり続けたいトリシャと、その望みを叶える友人たちの真実の“家族”の物語です。

 死んだ後にセレブのメイクを施してもらい、“美しく逝く”一人のトランスジェンダーの実話として、本作は2016年・第29回東京国際映画祭で最優秀男優賞と観客賞を受賞し、批評家から絶大な支持を受けた。
ジュン・ロブレス・ラナがパオロ・バレステロスを主演に、この世にかつて実在したトリシャが自分らしくあり続けた生き様を、豊かな色彩で丁寧に描き出している。

“美”は死んでも終わらない

『ダイ・ビューティフル』画像2枚目
© The IdeaFirst Company Octobertrain Films

 トランスジェンダーとして生きることで挫折から成功、暴力から愛まで、トリシャを通じてその世界を知る。どんなに他人から蔑まれても決して歪まず、ブレずに自分を保てるのは、彼女の美意識のおかげだ。

 棺桶に入ったトリシャの顔に、アンジェリーナ・ジョリーをはじめ様々なセレブにそっくりなメイクが施される。幾夜にも行われる埋葬前の儀式には挟み込まれるようにトリシャの人生が回想され、本物のセレブにはなれなくても華やかに謳歌した姿が切り取られる。

 普通だったら、毎回顔が違う死者に戸惑うはずだろう。でも、トリシャの美しさへの憧れと、波乱に満ちた彼女の日々を覗くことで、「美しくあり続けたい」という切実な意志が伝わる。

 世間からマイノリティとされる存在でも、まるで映画の主人公のように振る舞い、常に輝こうとするトリシャの姿が胸を打つ。
現に今、映画化されて多くの人々がその美しさを見ることになるのだから、死してなお美の意識が健在しているのだ。

本当の“家族”とは何か

『ダイ・ビューティフル』画像3枚目
© The IdeaFirst Company Octobertrain Films

 トリシャの父親は、トリシャの幼い頃からの女らしい立ち振る舞いを許せず、ついには勘当。トリシャは家を出て行ってしまう。それでも母親を亡くした孤児を育て、トランスジェンダーの友人たちや、その世界にいる人々を“家族”と呼ぶ。
トリシャにとって心の在るべき場所は、生まれ育った家庭にはなかった。自分が自分らしくいるために、“家族”を新しくつくる。

 トリシャにとってメイクは、たとえ姿を変えても、自分自身は変えないもの。本来の姿なんてものは外見ではなく、心の中にあるものだ。
幾夜に渡って数々のセレブに変身しても、トリシャは自分を貫き通し続けた。

「神様、あなたの贈り物を素敵にしました。」

 生前、トリシャが友人に遺志を委ねた時に発した言葉。
どの人生にとっても、その中では誰もが映画の主人公のようなものだ。他の人生を生きる必要はなく、トリシャのように輝き続けることが許されるているはずだ。
たとえ映画化されなくても、セレブでなくても、棺桶に入るその表情が少しでも穏やかであればハッピーエンドなのだろう。

 限りある命でも、美には限りがない。トリシャの死は終わりじゃなく、「最後のミスコン」に変えてしまっただけだ。

 生きていても死んでいても、「私は私だ」。その強い意志に背中を押される人は、決して少なくはないはずです。

ストーリー

 ある日、美女コンテストで優勝したトランスジェンダーのトリシャ(パオロ・バレステロス)が急死してしまう。

 トリシャの遺言は、埋葬前に幾夜にも渡って行われる儀式で、毎回異なるセレブの装いをしてほしいということ。残された友人たちはトリシャの遺志を受け、その願いを叶えるために様々なセレブのメイクを施し、美しいままに葬ろうと奔走する。

 その姿はSNSで広まり、葬儀場は瞬く間にトリシャの美しさを見る人々で溢れかえる――。

7月22日(土)、新宿シネマカリテほか全国順次公開

監督/プロデューサー/原案:ジュン・ロブレス・ラナ
キャスト: パオロ・バレステロス、ジョエル・トーレ、グラディス・レイエス、アルビー・カシノ、ルイス・アランディ
配給:ココロヲ・動かす・映画社○
原題:Die Beautiful/2016年/フィリピン映画/120分

Text/たけうちんぐ

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