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  • 2017.08.16

使い古された“ノスタルジー”に新たな表現が…『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

クラスのアイドル的存在の“なずな”が、母親の再婚のため転校することに。なずなに想いを寄せる典道は彼女と“かけおち”をし、時間が巻き戻る不思議な体験をする——。岩井俊二の名作ドラマが大根仁×新房昭之でアニメ映画に生まれ変わる。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』画像1枚目
© 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

「もしも、あの時に戻れたら。」

 人生はいつも決断の連続で、青春時代ともなると枝分かれした選択の中で、知らず知らず運命が左右されていく。
誰もが遠い目をして思い出す“あの頃”はそれに全く気付かない。あいつの想い、あの子の気持ちさえも、鈍感なまま日々を過ごしてしまう。

 青春は花火のように一瞬。去りゆくノスタルジーが眩しい青春ドラマが、SF的要素を含んだアニメとして現代に蘇った。

 1995年に劇場映画化した岩井俊二監督の“名作”と名高いテレビドラマを原作とし、脚本を『バクマン。』などの大根仁、総監督を『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之が手がけて完成したアニメ映画。

 広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子など豪華キャストによって、20年の時を経て再映画化した理由はどこにあるのか?
アニメでしか表現できない、今だからこそ描ける青春がここにある。

ヒロイン・なずなの魅力が全開

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』画像2枚目
© 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

 ただ単純に美しい青春映画が観たければ、本作はあまりオススメできない。
ちゃんと性春の要素も孕んでいるところが、大根仁監督が脚本を手がける理由の一つであり、中学生男子の無軌道な情熱、無意味な欲望が「下から見るか?横から見るか?」と割とどうでもいい花火の角度を劇的なものにしている。

 一人のアイドル的存在の女の子=なずなを巡って小さな炎を燃やし合う典道と祐介。ここまで男子の欲望を掻っさらう“なずな”がどう描かれるか、ここが重要でしかない。

 岩井俊二監督の熱烈なファンが多い名作をリメイクするなんて無謀な挑戦にも思われるが、それは冒頭10分を過ぎた辺りから杞憂に終わる。
互いに分野は違えど、キャラクターの鋭い切り取り方に共通した魅力を感じさせる大根仁×新房昭之両監督の掛け算は、なずなの小悪魔的振る舞いから満点を振り切る。典道を“かけおち”に誘い、思わせぶりな言動の数々は、男子が10数人束になってかかっても敗北する。

 ヒロインがここまでチャーミングであれば、典道と祐介が争い合う理由も理解できるし、その可愛さだけでもうあと200分は観続けられるのだ。

青春は美化されがち。
だから、もっとキラキラさせてほしい

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』画像3枚目
© 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

 現代劇であるように見えて、携帯など現代を匂わせるアイテムがほとんど出てこない。昭和なのか平成なのか、どこかタイムスリップしたような不思議な感覚に陥る。

 なずなが海で拾った玉を投げると、なぜか時間が巻き戻る。「もしも、あの時……」と後悔と自責がそこでリベンジができて、典道は新たな運命を選択する。そんなSF的要素と青春の淡い記憶が嚙み合い、後半はいまだかつて見たことのないビジュアルが目に飛び込んでくる。

 青春は美化されがち。だからこそ、もっとキラキラさせてほしい。そんな願いが叶うように、なずなと典道が眺める景色が劇的に変化する。

 初めてあの人と手を繋いだ瞬間、どんなに退屈な景色でも、いつも見慣れている風景でも、映画のワンシーンのように変わったことを覚えているだろうか。そこでは重力さえ忘れ、異空間のように気持ちがふわふわと漂い、気持ちが上手く伝えられなかったこともあったかもしれない。

 アニメでしか表現できない初恋の衝動が詰まっている。使い古された“ノスタルジー”にまた新たな表現方法が発明され、もう二度と戻れない夏がカラフルな花火とともに彩られる。

 いわゆるリメイクモノは、元の作品を越えるか? 越えられないか?というハードルが付き物。でも、全く別の方法で中学生男子と女子と花火を映し出した本作は、観終わるとそんな議題は吹っ飛んでしまう。

 本作を下から見るか? 横から見るか?
その角度は花火同様、どこから眺めても美しいに決まってるのだから。

ストーリー

 とある海辺の町の夏休み。迫り来る花火大会を前に、「打ち上げ花火って、横から見たら丸い?それとも平べったい?」という疑問で盛り上がる中学生男子たち。

 そんな中、典道(声:菅田将暉)が想いを寄せるクラスのアイドル的存在・なずな(声:広瀬すず)が母親の再婚によって転校することになる。

 なずなは典道を“かけおち”に誘い、町から逃げ出して東京へ向かおうとする。だが、抵抗もむなしく母親に連れ戻されてしまう。
「もしも、あの時……」もどかしい想いを抱えながら、なずなが海で拾った不思議な玉を投げると、なぜかなずなが連れ戻される前まで時間が巻き戻る。

 繰り返される時間と、それにより終わらない夏の一日。そこで典道となずながたどり着く運命とは――。

8月18日(金)、全国東宝系にてロードショー

総監督:新房昭之
脚本:大根仁
原作:岩井俊二
キャスト: 広瀬すず、菅田将暉、宮野真守
配給:東宝
2017年/日本映画/90分
URL:『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』公式サイト

Text/たけうちんぐ

次回は<座って観たくない。もはや、叫びたい。恋の衝動がすごい『ベイビー・ドライバー』>です。
子どもの頃の後遺症で耳鳴りが止まない通称“ベイビー”は、犯罪組織のドライバーから足を洗い、想いを寄せるウェイトレスと共に遠くの町へ逃げることを夢見る——。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』のエドガー・ライト監督最新作。

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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