「インドには、呼ばれる人と呼ばれない人がいる」三島由紀夫はよく言ったもんだ

インドが私を待っている

ひとりで立つ女性 Ton W

師走。師が慌ただしく走らなければならないほど忙しい時期という由来の如く、仕事もプライベートも同じくらい忙しい12月を毎年過ごしている気がする。今の私の心の支えと言えば、年末に控えたインド旅行である。この原稿を書いている1週間後には無事に首都・デリーに到着し、酒を飲んだりカレーやタンドリーチキンを食べたり、見知らぬインド人に声をかけられて適当にあしらっている頃だろう。

今月は何かとトラブルが多くてどうしても時間が足りなかったように思うし、ちょっと無理をしながら働いていた。でも、いいんだ。私にはインドが待っている。そう思うと、ほんの少しだけ背筋が伸びる思いがした。インド、旅行中はさんざん嫌な思いをするんですけどね。なぜか忘れた頃に行きたくなってしまう、不思議な国だ。

今回はインドのクジャラート地方という、もっとも観光客が訪れない州に行く。大体の人は「そこ、どこだ」状態で知られていない場所。インドの左側、パキスタンの国境沿いにあたる部分だ。なんでまたそんな辺鄙な場所へ……というと、この州は布や織物が有名であり、色鮮やかな民族衣装を身に纏う少数民族もたくさんいるらしい。昔、「いい場所だったよ」と言われたことを思い出す。それほど寒くはないみたいだし、ヒンドゥー教は暦の読み方が違うので正月もあまり関係ない。そして何より日本人があまりいなさそう、ということで決めた。他にも、ウズベキスタンとウイグル自治区、ラルンガルンゴンパ、ミャンマーのタトゥーを入れている民族の村、北東インドの元首狩り族の村などに行きたいと思っていた。が、気候や日程のことを考えると、自然と今回のクジャラート旅行になった。

ところで、「どうやって行き先を決めているんですか?」と聞かれることがある。ライブが目的の場合は日程との兼ね合いになるが、他の行き先はあんまり一貫性がない。同じ国に何度も行くこともある。結論から言うと、自分の興味と、日程と、航空券の金額に見合う行き先で決める。最終的な「行く/行かない」は航空券の確保によるのだが、仕事の休憩中にクレジットカードを握りしめてトイレに籠り、航空券の手配をする。すべてがちょうどいい航空券を見つけると、いてもたってもいられなくなる。航空券は、セールの時を除くと、日が経つにつれて高騰していくからだ。いや~~、今買うしかなくない……? 躊躇する理由、お前にあんのか!?? と、自分で自分の背中を押し、後先考えずにとりあえず買うというのが毎回の流れだ。