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  • 2017.06.24

SMとは本能を解放する象徴なのだ。あの“おとぎ話”が再び『フィフティ・シェイズ・ダーカー』

恋愛未経験のアナは若き起業家のグレイと恋に落ちるが、倒錯した愛の形を受け入れられずに彼の元を去る。その後、復縁を求める彼と再会し、めくるめくSMの世界へ——。激しい官能シーンが話題となったあの作品の続編。

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』サムネイル画像
©2016 UNIVERSAL STUDIOS

 大企業のCEOで、鍛え上げた肉体を誇り、ヘリコプターを操縦する。ヨットでデートなんて当たり前で、「お前の口座に◯万ドル振り込んでおいたから」なんて寝起きのテンションで言ってくる。さらに言うと、イケメン。

 このハイスペックに、誰もが掴んで離さないだろう。でも、そんな彼が“ヘンタイ”だったら?

 恋愛未経験の女子大生と若き起業家の歪んだ愛を描いた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の続編。
前作と同じく、アナ役をダコタ・ ジョンソン、グレイ役をジェイミー・ドーナンが続投する。新たに『L.A.コンフィデンシャル』の名優キム・ベイジンガーらがキャストに名を連ね、アナとグレイの官能の世界はやがて驚きの展開を迎える。

単なる“ヘンタイ”の市民権を得る映画ではない。

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』イメージ画像
©2016 UNIVERSAL STUDIOS

 10数分に一度官能シーンが訪れる。このペースはアクション映画に例えると街が幾つも吹き飛ぶレベル。ここで爆発するのはもちろん性欲で、銃の代わりにマニアックなSMグッズが武器となり、アクションシーンにも似た興奮を与えてくる。

 恋愛未経験だったアナもすっかり女子大生から大人になり、出版社で働き始める。グレイは仕事では限りなく成功を収め続けるも、人間としては変わらず愛に飢えている。
彼を歓ばせるのは企業ではなく、アナなのだ。と言うと、“アナ”がまるでダブルミーニングに聞こえるが、これはイケメンと美女によって“ヘンタイ”の市民権を得る作品ではない。

 グレイは単なるヘンタイではなく、過去のトラウマで刻まれた心の傷が特殊な性癖を生み出している。性格、地位、名誉もすべて性癖の前では立ち塞がり、裏の顔を見せてしまう。かつて拒んだグレイの愛の形を、アナはどう受け止めるのか。
センセーショナルな前作と違い、今回はそのヘンタイの理由を、グレイがそこに至るまでの経緯を丁寧に描き、より切実な愛として映し出す。エロティックなシーンの数々もオシャレな音楽で盛り立てて、その世界への間口を広げている。

SMは“解放”の象徴

 当然ではあるけど、ただセックスを続けるだけでは映画にならない。二人の恋路を邪魔する足枷がたくさん用意されることで、一つ一つの性愛がドラマチックに仕立てられる。幽霊のようにいつの間にか背後に佇みがちなストーカー女、ブルーアイからすでに怪しさが漂う上司の男、グレイをSMの世界へと引きずり込んだビジネスパートナーなど、新キャラが続々と登場する。

 恋愛感情はマフィア映画のように、次から次へと成功者に対する憎悪を生む。誰かの歓びが誰かの悲しみに変わるのは、恋愛をする誰しもが頭を抱える問題だ。
本作もまたアナとグレイに忍び寄る陰が、愛に飢えた感情そのもの。縛られ、嵌められ、身動きが取れないプレイとともに、命の危険にすら晒される二人がたどり着くSMの境地がそこに描かれている。

 誰もが秘密を一つか二つ抱えている。その開かずの扉を閉じたまま、欲望を抑え込んでしまい、恋人にも結婚相手にも不満を覚えていく。
本作が魅せる官能シーンの数々はただのエロに収まらず、“解放”の象徴だ。SMプレイに欠かせない手錠もまた、抑制のメタファーであるかのように。その鍵はコトが終わると必ず解かれるのだ。

 彼らが欲を満たすのはお金でもご飯でもない。それでも手に入らないモノとは何か。と、普遍的なメッセージを投げかけてくる。

 ただのエロい映画と敬遠するのはもったいない。いや、むしろエロい映画なんて滅多に公開されないので、今のうちに劇場で体感してほしい。
知られざる性癖はまた、パートナーへの知られざる性衝動を生み出すかも知れない。

ストーリー

 恋愛初心者の大学生・アナスタシア(ダコタ・ジョンソン)は、かつての恋人・グレイ(ジェイミー・ドーナン)の特殊な愛の形に応えることができずに彼の前から去った。
その後、大学を卒業したアナは出版社で働き始め、グレイは別れた後もアナへの感情が収まらず復縁を求める。そこでアナはグレイにある条件を提示し、再び二人はSMの世界へと潜り込む――。

6月23日(金)、全国ロードショー

監督:ジェームズ・フォーリー
キャスト:ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナン、リタ・オラ、キム・ベイシンガー、マーシャ・ゲイ・ハーデン
配給:東宝東和
原題:Fifty Shades Darker/2017年/アメリカ映画/118分
URL:『フィフティ・シェイズ・ダーカー』公式サイト


Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
ライター/映像作家
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