SMとは本能を解放する象徴なのだ。あの“おとぎ話”が再び『フィフティ・シェイズ・ダーカー』

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』サムネイル画像 2016 UNIVERSAL STUDIOS

 大企業のCEOで、鍛え上げた肉体を誇り、ヘリコプターを操縦する。ヨットでデートなんて当たり前で、「お前の口座に◯万ドル振り込んでおいたから」なんて寝起きのテンションで言ってくる。さらに言うと、イケメン。

 このハイスペックに、誰もが掴んで離さないだろう。でも、そんな彼が“ヘンタイ”だったら?

 恋愛未経験の女子大生と若き起業家の歪んだ愛を描いた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の続編。
前作と同じく、アナ役をダコタ・ ジョンソン、グレイ役をジェイミー・ドーナンが続投する。新たに『L.A.コンフィデンシャル』の名優キム・ベイジンガーらがキャストに名を連ね、アナとグレイの官能の世界はやがて驚きの展開を迎える。

単なる“ヘンタイ”の市民権を得る映画ではない。

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』イメージ画像 2016 UNIVERSAL STUDIOS

 10数分に一度官能シーンが訪れる。このペースはアクション映画に例えると街が幾つも吹き飛ぶレベル。ここで爆発するのはもちろん性欲で、銃の代わりにマニアックなSMグッズが武器となり、アクションシーンにも似た興奮を与えてくる。

 恋愛未経験だったアナもすっかり女子大生から大人になり、出版社で働き始める。グレイは仕事では限りなく成功を収め続けるも、人間としては変わらず愛に飢えている。
彼を歓ばせるのは企業ではなく、アナなのだ。と言うと、“アナ”がまるでダブルミーニングに聞こえるが、これはイケメンと美女によって“ヘンタイ”の市民権を得る作品ではない。

 グレイは単なるヘンタイではなく、過去のトラウマで刻まれた心の傷が特殊な性癖を生み出している。性格、地位、名誉もすべて性癖の前では立ち塞がり、裏の顔を見せてしまう。かつて拒んだグレイの愛の形を、アナはどう受け止めるのか。
センセーショナルな前作と違い、今回はそのヘンタイの理由を、グレイがそこに至るまでの経緯を丁寧に描き、より切実な愛として映し出す。エロティックなシーンの数々もオシャレな音楽で盛り立てて、その世界への間口を広げている。