死ぬまでには観ておきたい映画のこと

犬好きの人は絶対に見逃してはならない。ウェス・アンダーソンが生み出す新たな日本像とは『犬ヶ島』

「犬インフルエンザ」が蔓延する未来の日本で、少年・アタリはたった一人で犬が隔離された“犬ヶ島”まで愛犬・スポッツを救いにやって来る——。ウェス・アンダーソンが贈る日本愛に溢れたストップモーションアニメ。

ウェス・アンダーソン監督映画『犬ヶ島』の5頭の犬と人間のシーン
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

 ペットは家族だ。犬を飼ったことがある人なら、少年・アタリが危険を顧みずに愛犬を救いに向かう気持ちが分かるだろう。
一途な想いは少年と犬だけに限らない。リスペクトを含めた強烈な愛情は、監督と日本との間にも溢れている。そこでさらに「日本」をアップデートし、観たことのない世界を“手作り感”で生み出している。

『グランド・ブダペスト・ホテル』『ファンタスティック Mr.FOX』など緻密な作品作りで知られるウェス・アンダーソン監督の最新作は、少年と犬の冒険を描いた今まで以上に緻密に作られたストップモーションアニメ。
声の出演にブライアン・クランストン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、エドワード・ノートンなどハリウッドきっての名優たちが名を連ねる一方、野村訓市、野田洋次郎(RADWIMPS)、村上虹郎、渡辺謙、夏木マリといったバラエティに富んだ日本人キャストも集結している。

新旧織り交ぜた「日本」のビジュアル

ウェス・アンダーソン監督映画『犬ヶ島』の荒野に5頭の犬がいるシーン
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

 強烈なビジュアルインパクトに打ちのめされる。今から20年後の未来の物語のはずなのに、なぜかどこか懐かしくて親しみ深い。
映画から黒澤明や小津安二郎の世界観、絵画では広重や北斎などのアート性といった、古き良き日本文化の美味しい部分をリスペクトを込めて抽出し、SF世界の中に贅沢にもトッピングしたイメージは今までに観たことがない。

 新旧織り交ぜた「日本」。ウェス・アンダーソンは日本人が知らない、もしくは日本人が忘れてしまった日本の魅力を知っているかのようだ。

 少年・アタリが愛犬・スポッツを探し求めて、一途な感情で突き進んでいく。ペットを飼ったことがある人、特に犬好きの人にとってはアタリの切実な想いを自分ごとのように汲み取れるだろう。
「あなたの安全を末永く見守ります」と誓ってくれた忠犬は、新幹線事故で両親を亡くした孤独な少年の唯一の親友だ。その熱き意志を嗅ぎつけたレックスやチーフら個性豊かな犬たち。アタリと彼らとの間に友情が育まれ、ハートフルで“ワン!”ダフルな物語に仕上がっている。