過去はいくらでも変えられる

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 ハルコちゃんとの飲み会は、朗らかで楽しかった。大きな驚きやショックは無かったが、ずっと素直に「へえ」と楽しく聞いていた。いっぱい笑った。
その会話のほとんどは、きっと私が数日で忘れるものだったけど。

 そう、確かにハルコちゃんの半生は、ドラマチックには聞こえなかった。
でもそれは、ハルコちゃん自身がドラマチックに語らないだけの話。 “いじめで病んで引きこもりになって、でも奨学金を返さなきゃだから看護師を辞められない”っていくらでもドラマチックにできるけど、ハルコちゃんは絶対そんな風には言わない。

「中学時代の同級生には本当に会いたくなかったけど、それじゃいけないと思って成人式の二次会に行ったんです。私にとって、過去へのこだわりとの決別の日でしたね」  

 自分の人生の、要らないところはちゃんと切り、引きずらない努力を重ねている。過去をドラマチックにして浸っていてもしょうがない。
「いじめられたから、看護師の仕事に出会えたんだけどね?」なんていじわるな質問をすると、「そうなんですよねー」と悔しそうに笑った。もちろん、「ま、決して感謝なんてしないですけどね、でも、もう見返せたんで大丈夫です」と続けた。

 ちゃんと毎日自分と向き合ってる人間だなーと思う。
ちゃんと悩んで、そこから浮上しようとして、先に進んで行く。

「10年後も、楽しく頑張れてたらいいですよね。20年後も…同じでいたいです。“ま、いいや”と考えちゃう風にはなりたくないかな」

 将来について、そう語った。具体的な目標は特にない、と言う。

 具体的な目標がない彼女は志が低いのだろうか。
そんな風に言う人の、どれだけが彼女より頑張れているのだろうか。
「結婚もしたいし子供も欲しいですけどね」と付け足すハルコちゃんは、今日も飲み会に行き、でもちゃんと早めに帰宅し、万全の体調で出勤する。

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 2017年冬、真っ当に生きる女の子に出会った。
確かに彼女の行き方は派手じゃない。
でも、“毎日成長を感じられるから、仕事は楽しいですよね”なんて言える生活、どれだけの人ができているだろうか。
目の輝きが変わるほどの趣味を持ち、お金を投じているだけの英会話スクールとジムに後ろめたさを感じ、モテたいと縁結び神社に友人と行く。
そして、毎日患者さんと健康に接する。生活に無理がないレベルの勉強を続け、日々成長を実感している。
とても素敵な生き方に見えた。

 派手じゃないし夢見て選んだ仕事じゃないけれど、99%の人間の人生は地味なもんじゃない? 派手な人生だけを見つめてウダウダしてるくらいなら、ハルコちゃんのように生きてみたいな、そんな風に思った。それじゃ足りない? そう思うなら、何か一個始めてみればいい。

「私の話、面白くなかったですよね? あはは」

 確かに、面白くはなかった。でも、すごく面白かった。すごく人間くさかった。私は、彼女の人生が好きだ。

 あなたは、どれだけ自分の身の丈をわかって生きたいですか? そこにまだ見ぬ幸せがあったりするのかもしれない。隠されているかもしれないのかな。

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Text/舘そらみ

次回は<20歳のインフルエンサー妹尾ユウカインタビュー 私たちはこれからも彼女の毒とズルさに踊らされ続ける>です。
「他人なんてどうでもいい」と語る20歳のインフルエンサー妹尾ユウカさん。世間が求める毒っ気たっぷりで、強くてズルい女である。しかし、急に顔を覗かせた彼女の本音は・・・。脚本家・舘そらみが本気なやつらにインタビューする本企画、今回は妹尾ユウカさんに迫ります。