このままではAVはなくなる。アダルトビデオのデモに参加してみた

かつて、AV監督をしている友人に頼まれて、何度かエキストラとしてアダルトビデオに出たことがあります。電車を模したスタジオでの乗客役だとか、ハプニングバーで遊んでいる客のひとりだとか、セックスの講習会を受けに来た女性たちのうちのひとりだとか、だいたいはモブ役なんですが、ある時は取材に来た女性記者役としてセリフをつけられて、めちゃくちゃ大根な演技を晒したこともある。その作品を偶然にも目にしたらしい夫は、「オナニーしようと思って再生したら、よく見知った顔が出てきた上に、セリフがあまりに棒読みでオナニーする気が失せてしまった」そうで、せっかく課金したのに申し訳ない。

そういえば、知り合いの編集者に出張で泊ったビジネスホテルで、アダルトチャンネルをつけたらわたしがエキストラとして出演していて笑ったといわれたこともあった。AVなんて年間に山ほどリリースされているはずなのに、意外とバレるものですね。みんな好きだなー。

AV新法ができたことで…

アダルトビデオの撮影現場という、わたしにとってはちょっと非日常な場面に参加させていただけるのは、経験として面白いので好きなんですが、たぶんこれから先はそんな機会もあんまりなさそうでちょっとつまらない。
というのもAV新法というものが数年前にでき、出演者は一ヶ月前に契約書にサインをするだとか、リリースから一年間は販売停止が可能とかいう決まりができた以上、素人のエキストラなんてリスク高すぎで使ってくれなさそうじゃないですか。それでメシを食っているわけではないので、生活に支障があるわけではないけれど、人生の彩りがひとつ減ってしまったことは確か……というなか、飲み友達として親しくさせていただいている、AV監督で作家の二村ヒトシさんに声を掛けられました。AVのエキストラではなくデモへの誘いです。二村さんって政治的な活動とは無縁っぽいと思っていたのですが、今年の6月にAV新法の見直しがあるとかで、改正に向けて旗を振ることを決意したそうなのです。

その運動が、なにをどう改正することを望んでいるのかをざっくりと説明するとポイントは3点。法律の名称に「被害」と入っているのが、好きでAVに出ている演者たちにとっては屈辱的だというので変えてほしいというのがひとつめ。ふたつめは撮影一ヶ月前に契約を結び、撮影後四ヶ月は作品をリリースできないという決まりを緩くしてほしいということ。三つめは業界の実態調査がほとんどなく決まってしまった法案なので、いま一度ちゃんと調査してほしいということ。そのための署名を集めるとともに、デモって世間にアピールするという。というわけで、先週の金曜日の夜に、新宿で行われたデモに顔を出してきたのでした。