私への関心が引いていくのがわかった

今回も割とフランクに「いやー私、全然育ちよくないんですよねー。ずっと父親に殴られてたし」みたいな話をしたら、相手の私に対する興味・関心がサッと引いていくのがわかった。タイミングがよくなかったのかも。もっと親しくなってから重苦しい雰囲気を出しながら伝えるべきだったのかも。「大変だったんだね」と一応言ってくれはしたけれど、明らかに狼狽しているというか、今後深く関わるのはやめようと思っているのがわかる。

その話をした人は、私と同い年で実家に住んでいて、夕食を食べながら家族でお笑い番組を見たりするほど仲がいいらしい。私とは真逆で、まったく想像のできない世界の話だった。確かにそういう人からすれば、家族と仲が悪く、まともな関係を構築できなかった私は異様な存在で、自分とは遠くかけ離れた生物のように感じられたのかもしれない。「失敗しちゃったなあ」と素直に感じた。

相手に理解できない部分があったとしても

こんな風に家庭環境が悪かった話を吐露すると、相手に見損なわれることがごくたまにある。過去の出来事は変えられないし、隠す気がないからこそ、遅かれ早かれ見限られてしまっていたのだと思う。
前向きに捉えれば、もっと仲良くなる前に見限られてよかったかもしれないが、こうやって自分の出生の悪さが原因で相手に見損なわれる瞬間はいつも少しだけ悲しい。ある程度の覚悟のうえであったとしても。

だって、家族は選べない。物心ついた頃から両親の仲が悪かったことも、両親から愛される子どもではなかったことも、私ひとりではどうにもできなかったし、その事実を受け入れて軌道修正していくしかない。変えることができなかった過去に対して見損なわれてしまったのなら、もうそれは「仕方のないこと」として処理するしかないのだと思う。

こういう出来事に直面して、ちょっとだけ落ち込むたび、私は他者に対してできるだけ優しくありたいし、わかりたいと切に思う。人は、出生とかひとつの要素だけで決まらない。もっと複雑で難解で、自分とは相容れない存在なのだし。「受け入れられないな」と認識するボーダーは、確かにあるのかもしれない。それでも、自分にとって理解できないことがあったとしても、そこで見限ったり断定したりせずに、ちゃんと受け入れたい。
断絶したりせず、自分なりの方法で、誰かに対して優しい存在でいられればいいなと思う。

Text/あたそ