独り身なのに働けなくなったらどうする?「ヤバめの事態」に無縁な人はいない

突然だが、私の祖母は、自宅で一人で亡くなっている。孫の私がいるのだから当然、結婚もしていたし、子供もいた。なんなら、子供(私の伯母)と同居していた。しかし、伯母の留守中に息を引き取ったため、亡くなるその瞬間は「ひとり」だったのだ。もちろん帰宅した伯母にすぐに発見されたので遺体が何日間も放置されるようなことはなかったが、こういう場合って「孤独死」になるんだろうか……? 

孤独死が怖いという人は、①息を引き取るその瞬間に「ひとり」でいるのが怖いというケースと、②一人暮らしで遺体が何日間も発見されないのが怖いというケースの、2パターンがあるのかなと思う。しかし、子供と同居していた私の祖母のような人ですら「ひとり」で息を引き取ることがあるのだから、もう①を完全に防ぐのは不可能では? と考えてしまう。不可能だから、諦めるしかない。問題は②だが、2050年には全世帯における一人暮らしの割合が44.3%になるだろうという推計が出ている今の世の中、これがIoT技術などで解決されないはずがない。よって、この連載でも何回か言っているが、私は孤独死がまったく怖くないのであった。なんなら、一人でいるのが好きなので、怖いどころか「死ぬときは一人がいいなあ」とさえ思っている。

しかし、「死ぬその瞬間は一人でも別にいいけど、死ぬまではいかないような体調が悪いときに一人だと不安だ」という話なら、ちょっとだけわかる。そこで読んでおきたいのが、雨宮処凛さんの『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』だ。

「ヤバめの事態」に無縁な人はいない

本書は、49歳の独り身、フリーランスで猫を飼っている雨宮さんによって、「病気などで働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」など、人生の中でわりとヤバめの事態にたった一人で遭遇した場合、どうすればいいかが書かれている実用書である。実は使える制度はけっこういろいろあって、ただしそれらの多くは残念ながら「こういう制度ありますけど、使わなくて大丈夫ですか?」と、向こうから親切にやってきてくれたりはしない。こちらから門を叩き、「よろしく頼むぜ!」と言わなければならないのだ。

たとえば、難病と診断されたら難病医療費助成制度が使えること。親の介護が始まりそうになったら、「地域包括支援センター」に連絡すると介護に関する適切な機関と連携してサポートしてもらえること。あと、「ヤバめの事態にたった一人で遭遇した場合」と言ったが、配偶者がいても相手が突然死亡することがないとは言い切れない。その場合はどうしたらいいかなども書いてある。

つまり、この本に書かれていることが無縁な人は、独身も既婚も、今健康で問題なく働けている人も、本質的には誰もいないのである。最近はそんな失礼な人もいないけど、独身であることを理由に「将来どうするつもりなの?」などと聞かれることがあったら、この本を差し出して「あなたこそ将来どうするつもりなのですか?」と聞き返せばいいと思う。