別れたら、そこで失恋両成敗!

 そして、「オレ物語」がなにより厄介なのは、自分に都合よくシナリオを書き換えたことを、当の本人すら自覚していない場合があるということです。

 女性関係で信用できなくなった彼に、私から別れ話を切り出したところ、結論をはぐらかされてその場はうやむやになってしまいました。
後日、しばらくしてから「この前の話なんだけど……」と言いかけたら、「今はお互い付き合う時期じゃないと思うんだ。すまないけど距離を置こう」と言われ、最後はなぜか“私がフラれた”みたいな感じにされて終わりました。

 まさかの立場逆転!
入門して3日目のマジシャンが、無理やりハトと花をすり替えた、みたいなバレバレの荒業です。

 でもこれ、本人は“本当に”自分がフッたと思い込んでいる可能性があるから恐ろしいんですよ。
それまで恋愛において同じ「物語」を語ってきたふたりが、初めて「彼の物語」と「彼女の物語」に引き裂かれるのが、別れ話だからです。

 以前、私の友人同士のカップルが別れた時に、別れの理由や、どちらがフッた/フラれたのかという事情を、それぞれ別々の席で聞いてみたことがあります。
すると、「向こうが別れたがらなくて、結局、私(俺)からフッたみたいな感じかな。でも、どっちが悪いわけじゃないよ」と、見事にどちらも同じ答えが返ってきたのです。

 それだけ円満な別れだった…と言うこともできますが、結局、人は自分に都合のいい「物語」しか解釈しかできないんだな、と思ったのも事実。

 でも、それでいいのかもしれませんね。
よっぽど一方的な原因がない限り、失恋における「どっちが悪い」はナンセンスです。

 別れたら、そこで失恋両成敗。

 フッた側もフラれた側も、同じように傷つき、傷つけられたのだと思えるようになれば、失恋の痛手からも早く立ち直ることができるのではないでしょうか。