素直じゃない恋愛マーケットで恋人を探すのは至難の業である。
人生を分かち合えるほどの人を見つける前に、本音か建前かわからない曖昧なメッセージを嗅ぎ分ける必要がある。
そして、気が遠くなるような作業をいくら続けたところで、自分が望んでいるものに出会える保証はない。
それでも諦めずに作業を続けるか、目の前にあるもので妥協するか、それとも諦めて違う道を進むか。悩んでいるうちに本来の目標さえわからなくなる。
そうやって混乱したまま出会いを求めては、期待を裏切られて周りと自分を傷付けてしまう。

 カミングアウトしたばかりの男の子も、その男の子を傷付けた人たちも、案外そんなに遠くない場所にいるのだろう。
もちろん、相手の気持ちを利用する詐欺師や、自分の欲しいものを得ることだけ考えているタチの悪い人もいる。

 しかし、多くの人たちは自分の向かう場所もわからずに、何かにしがみ付こうと必死だ。
「こうあるべき」という考えを追いかけながら、そこに馴染めない自分を責める。
あてもなく彷徨う苦しみのせいで他人を思いやることさえできなくなる。
もっと自由に恋愛やセックスができるのなら、こんな問題に悩まされる必要もないのかもしれないが、この世界は狭い箱の中に人を閉じ込めるのが大好きだ。

「また相談相手が必要になったらいつでも連絡して」

 落ち込んでいた男の子にかける言葉はそれくらいしかなかった。
彼がこのシビアな世界をサバイバルできる柔軟な人になれるように祈りながら、自分もそうなりたいと願った。

Text/キャシー

次回は <69(シックスナイン)は想像してたほど気持ちよくなかった>です。
今回は「シックスナインとセックスコミュニケーション」について。言葉は知っているけどなかなか行動に移せない。そんな時、皆さんはどうしていますか?