いつか見た『ショートバス』という映画ではオーガズムが大切なテーマだった。
その主人公であるソフィアはセックス・セラピストとして働きながら、オーガズムをまだ一度も経験したことがない。
それ故に真剣に悩んでいた。
彼女がイキたいがために本気で頑張る姿がとても一途で、少し滑稽だった。
彼氏とのセックスで演技していることがバレているのに、ソフィアは頑なにそれを認めない。
セックスはこうあるべきだという既成概念に抗いながらも、オーガズムに達せない自分が許せない彼女のキャラクターにとても共感できた。

 この社会には確かにイクことに対するプレッシャーが存在する。
そのおかげで、自由に羽を伸ばして楽しみたいのに、逆に狭いボックスの中に押し込められているような気分になる。
セックスをどう楽しむかは人それぞれだ。
前戯が好きな人もいれば、オーガズムに至るまでの過程で満足する人もいる。
最高潮のオーガズムが大好きな人だっている。
イキたいときにイッて、イキたくないときはイカなければいい。
そんなことはわかっているが、周りからオーガズムを期待される中でそれを貫き通すのは難しい。
説明したところで、理解されないことも多い。
「もういいよ」と相手をガッカリさせるか、我慢してイクか、今日もその間でぶらぶら揺れている。

Text/キャシー