憧れの女性から逆プロポーズ!その瞬間に冷めてしまった理由/中川淳一郎

今回はそんなにエロイ話ではないと思うが、精神的なエロさと肉体的なエロさをどう両立させるか、という話を書いてみる。僕は大学4年生のとき、とにかく一人の女性とセックスをしたくて仕方がなかった。いや、多分、本気で好きだったのだと思う。この人と一緒にいられればどんだけ幸せだろうか、と思うとともに、この人とセックスを本当にしたくてたまらなかった。とはいっても、そこに至るまでにはとんでもなく高い壁があったのだ。

僕は22歳で、彼女は36歳の大学職員の小山さんだった。理工学部の資料室のような施設があり、そこの資料の貸し出しや管理を担当していたのが彼女だった。身長は170cmほどあり、183cmある僕は背の大きい人が好きだったのでまずはその段階で好きになった。あと、ショートカットが似合う人だったのだが、そこもドンピシャの好みだった。

彼女については「資料室にすごい美人がいるぞ!」と友人には常に言っていたが皆「あんなおばさん、何でお前は好きなんだよ?」と言われてばかりだった。「女は若いからこそ価値がある」といった空気感が当時はあったのかもしれない。でも、僕にとっては10代後半~20代前半の学内の女子学生よりも世間的には「熟女」と言われてしまう女性への憧憬の念があった。

キャンパスに入って資料室の脇を通るときに彼女が乗るローバーミニが停めてあったらそれだけで幸せな気持ちになった。「あぁ、今日は小山さん、この場にいるんだな。もしかしたらキャンパス内ですれ違うかもしれないな」と。

6月下旬、自分はとある巨大メーカーのエンジニアとしての職を獲得し、卒業後はとりあえず安定した生活を送れるようになることが明らかになった。彼女に喋りかけるきっかけとして、資料室に行ったときにこう言ってみた。

「小山さん、こんにちは。○○社の内定を取りました!」

すると彼女はこう言った。

「ニノミヤ君、ふーん、良かったね。まぁ、頑張ってね」

実に素っ気ない返事だった。しかし、こうして喋れる機会ができただけに、強引に自分の電話番号を彼女に渡した。「僕は小山さんといつかサシで会いたいです」と言いながら。

結局彼女とは、卒業間近に「仕方ないわね」ということで、大学キャンパス近くの喫茶店で昼休みの終盤の20分、コーヒーを飲めただけだった。

大企業に入社してから…

大学を卒業し、さまざまな女性がいる会社に入っても自分の心の中では小山さんがNo.1の女性だった。なんとか彼女と会えないかな、とも思ったものの、それは困難なもの。かくして1年目の冬が来たところ、突然小山さんから電話が来た。携帯電話に知らない番号から来たのだが出たら「小山です。ニノミヤ君の大学職員の……」と言う。

こちらはこの一言で興奮の絶頂になりながら「こっ、こんにちは!! こっ、小山さん、お久しぶりです!」となる。お互いに近況を話していたところ、小山さんはこう言った。

「ニノミヤ君さぁ、私のこと、色々好きだとか言ってくれていたよね。近々会わない? あなたの家に行きたいの」

これは渡りに船、とばかりに、僕は次の土曜日の夜に我が家に来てもらう約束を取り付けた。当時僕は郊外の土地があまっているような、大家さんと隣接しているアパートに住んでいた。大家さんに言えば、彼女のローバーミニを停められることは分かったので、「車も停められますよ。ぜひ土曜日の夕方、来てください!」と上気しながら言った。

なんということだろうか……。大学時代、散々アプローチをし、つれない返事をされた憧れの美人がまさかの電話をしてきてくれ、家に来てくれることになったのだ。当然のごとく僕は家の掃除をし、彼女を迎え入れた。

大家にはローバーを庭に停めさせてもらい、この日は僕が小山さんのために夕飯を作った。

「水炊きでいいですか? いい鶏を買ったんですよ」

「ニノミヤ君、私、鶏好きよ」

というわけで、2人してビールを飲みながら水炊きを食べた。特に約束をしていたわけではないけど、彼女は酒をガンガン飲んでいるので、もう僕の家に泊まるのだろう。食事を終え、さらに酒を飲んだところで彼女はこう言った。

「ニノミヤ君、今日、泊まっていっていい? さすがに飲酒運転はまずいのでね……。今日は本当に楽しかった。大家さんには伝えてもらっていい?」

僕は大家の家に行き、この日来た女性が酒を飲んだため車では帰れないことを伝えたところ、大家は「まぁ、ニノミヤ君、彼女がやっとできたのw」とむしろ歓迎してくれる様子だった。