「おゆみちゃんはイラストレーターでフォロワーがめちゃくちゃ多いんだよ!」
という紹介のされ方をされることが多い。
私はそれを言われるたびに、「いや、大したことないんで……」か「数字で誤魔化してるんで……」と苦笑しながら答えている。そして大抵その日の夜になると、Twitter(現X)でギャーギャー愚痴を吐き散らかすのだ。私には何も価値がないのか、と……。
実際、どうして私のInstagramアカウントのフォロワー数が多いかといえば、フォロワー数さえそこそこあれば実績がなくともイラストレーターと名乗ってもハッタリがかませるだろうと思って、増やしたからだった。
営業は1度だけしたことがあるけれど、思い出すだけで顔を覆いたくなるくらい自分の社会性のなさがあらわになっただけで、実りにはならなかった。
だから営業はもうやりたくない。
じゃあ、何か賞でも目指して応募するかというと、そうはしなかった。イラストレーション業界をあまり知らなかった頃の自分でも、自分みたいないわゆる “漫画絵”が評価されるとは思えなかったのだ。
自分が好きで憧れて絵を描くようになったのは漫画のおかげだけれども、世の中的に “漫画絵”はレベルの低いものとして見られる。少なくともアート・イラストレーション業界ではそうだと思う。
いつだったか、とあるイラストレーターが「最近のイラストレーターは漫画絵ばかりで理想とは違う」と呟いていた。
(ああ、やっぱりそう思われているんだな)と私は少し申し訳なく思った。私がいつも自分の絵を下手だと卑下する理由だ。
そういうこともあって、あくまでこれは独断と偏見でしかないけど、コンペは無理だなと早々に判断していた。
狙った通りに反応をもらえるのが楽しかった
フォロワー数を増やせる自信があったのには理由があった。
絵で仕事をもらうちょっと前、8年くらい前だろうか、あの頃はブログが流行ってて、私はインターネットとの相性が人よりは良かったのか当時運営していたブログがハネることが何度かあった。
はてなブックマーク数という今で言ういいね数を稼ぐのが楽しかった。あの頃はいろんな企業がオウンドメディアを始めて、そこから寄稿の依頼をもらうのがブロガーたちの間ではかっこいいとされていたと思う。中には書籍化をする人もいた。
私は書籍化はしなかったけれど、連載を持ったり単発で記事を書かせてもらったりしていた。
ブログブームもだんだん冷めてきた頃、今度はTwitterに4コマ漫画を頻繁に投稿するようになった。たくさんいいねをされたし、エゴサーチも捗った。
ブログもTwitterも、自分が狙った通りに反応をもらえるのがとにかく楽しかった。
しかし、さっきも書いたようにブログブームは下火。Twitterは逆にライバルがたくさん。
じゃあInstagramならイケるかもしれない。
結果、狙った通りにフォロワーはすぐ増えてくれた。
フォロワー数が5,000を超えたあたりで、初めてイラストレーターとしての仕事をいただいたのは今も覚えている。ありがたいことに今は増えたり減ったりをしながら6万前後のフォロワー数をキープはできている。
フォロワー数のおかげでイラストレーターとしての仕事を今ももらえているし、こうしてAMで連載も持てたし、なんなら友達も増えた。Instagram無しに今の自分は無いと言っても過言じゃない。
「じゃあ、もしもフォロワー数が0だったら一体自分の価値ってなんなんだろうか?」
根暗な私はふとこんなことを考えてしまう。
絵だけじゃ勝負ができないと思ったからフォロワー数を増やしたはずだというのに。
「もしもフォロワーが全然少なかったら、相手にされなかったんだろうか? みんな見向きもしなかったんじゃないだろうか?」
フォロワー数のことを言われるのは嫌だったけど
そもそも自分の今のフォロワー数が多いとは私自身思っていないのだけど、でも武器ではあると自覚はしている。
自覚しているだけに、数字ごときじゃびくともしない人を目の前にした時はとてもとてもつらい。
絵も自分の容姿も自信が無いのに、頼りの切り札ことフォロワー数でもなんの反応をもらえない時。こういう時、(30万とか50万とかいたら振り向いてもらえたんだろうか……)なんて愚かなことを私は考える。
数字で見られたくないと思いながらも、興味を持たれないと数の力に頼りたくなってしまうのだ。罪深い。
ちょっと前まではフォロワー数のことをいちいち言われるのが本当に嫌で嫌で仕方がなかった。
だって、そんな紹介のされ方を仮にした時に「え、誰?」という顔をされることの方が多いのだ。ああいう時はなかなかつらいものがある。こちらも申し訳ない気持ちになるし、向こうも多分知らないから逆に反応に困り気を遣うハメになってることだろう。
でも、言われるうちが華なのかもしれないって最近は思い直すようにした。
誰にも見向きもされないのはつらいし怖い。
ふ〜ん、誰?と 思う人の方が確実に多いが、「絵は大したことないけどフォロワー多いからとりあえず繋がっとくか」と思ってくれる人もかろうじているだけすごく恵まれているのだと思う。
生きているとつくづく悩みは尽きない。
根が明るかったら、こんなことで悩まず、「いえ〜い有名人でーす!」とダブルピースかませられたんだろうか。
今日も私は、(ああ、フォロワーがいっそ100万人いたら自己紹介せず済んで生きるのも楽なんじゃないのかしらん)なんて、アホなことを思うのであった。
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