死ぬまでには観ておきたい映画のこと

グザヴィエ・ドラン最新作!「もうすぐ死ぬ」と告げる主人公と家族『たかが世界の終わり』

人気作家・ルイは自分が死ぬことを伝えるために帰郷する。だが、家族と他愛のない話をしていく中で告白するタイミングを失っていく——。カナダの若き天才グザヴィエ・ドラン監督の最新作

たけうちんぐ 映画 たかが世界の終わり グザヴィエ・ドラン マリオン・コティヤール レア・セドゥー ヴァンサン・カッセル
© Shayne Laverdière, Sons of Manual

 悲しみ、喜び、怒り、歓び。日々ニュースで人を殺めたり、人を楽しませる感情の源はどこにあるのか。その答えが分かっていながらも、愛すべき人を愛することができず、またその愛を上手く伝えられなかったりする。
本作の主人公・ルイの家族もその例外ではなく、不器用な愛で次男を迎え入れ、その答えを有耶無耶にしていく。

『Mommy マミー』『わたしはロランス』などで世界中の映画ファンを次々と騒がし続けるグザヴィエ・ドラン監督の最新作。
『エディット・ピアフ 愛の賛歌』のマリオン・コティヤール、『アデル、ブルーは熱い色』のレア・セドゥー、『美女と野獣』のヴァンサン・カッセルなど実力派を揃えた今作が映し出すのは、愛し愛されることにおいてのディスコミュニケーション。つまり、“修羅場”がここに描かれ描かれている。

 

ワン・シチュエーション劇の閉塞感から逃れられない

たけうちんぐ 映画 たかが世界の終わり グザヴィエ・ドラン マリオン・コティヤール レア・セドゥー ヴァンサン・カッセル
© Shayne Laverdière, Sons of Manual

「もうすぐ死ぬ」なんて言われたら、誰もが見向き、誰もが振り返らずにはいられない。だが、ルイは全くそれが切り出せない。饒舌な家族をただ無口で見つめる。口元を緩めたり、歪めたり、時に力んだり。
ルイに憧れる妹・シュザンヌ、敬語で話しかけてくる兄嫁・カトリーヌ、とにかく不器用な母・マルティーヌ、ルイに面倒臭い劣等感を抱く兄アントワーヌ。それぞれのクローズアップが息苦しく映り、窒息死に至りそうなほどルイの口数を減らす。

 なんてことはない他愛の会話でも、グザヴィエ・ドランはそこが地獄であるように演出する。重苦しい重低音と無音を繰り返す様は、まるで本当に世界が終わるかのようだ。ルイはただ存在しているだけの空虚なアイコンとして、家族が掻き回していく。

 ほとんどが実家の中で繰り広げられるワン・シチュエーション劇の閉塞感。全員が確実に愛を持っているはずなのに、すれ違いが続く。そのやるせなさに逃げ場がなく、続いていく修羅場に息を飲む。