『最高の離婚』がたどり着いた“恋愛ドラマ”の境地とは?(前編)

二組の夫婦を通して描く
“人はいかにわかり合えないか”

最高の離婚 福田フクスケ 画像 恋愛ドラマ勝手に深読み入門 Celine-Ludovicckyqi

 みんな、どう? 最近、別れた人と同居してる?

 往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていくこの連載。
実に、前回から4ケ月ぶりの更新となってしまいました。

 4ケ月も放っといたら、ハムスターだったら死んでますからね!
連載がハムスターじゃなくて、本当によかったです。

 こんなムラのある連載ペースが許されるのは、日本で『HUNTER×HUNTER』だけということを肝に命じ、深く反省したいと思います。

 そんなトガシィな(冨樫義博のような、という意味の形容詞。いま作った)私のハートを、再び更新へと駆り立てたのは、3月21日に最終回を迎えたばかりの『最高の離婚』が、最高におもしろいドラマだったからです。
“豊作”といわれる今期のテレビドラマのなかにあって、クオリティという点でも、世間からの注目度という点でも、ともに傑出している作品でした。

 そしてこの作品は、恋愛ドラマがすっかり効力を失っていた現在のドラマシーンにおいて、久しぶりにその復権に成功していたと思います。

 物語の舞台は中目黒の住宅街。
神経質で細かい性格の濱崎光生(瑛太)と、大らかでがさつな妻・結夏(尾野真千子)。
日頃から細かいことで言い争いの耐えないふたりが、性格の不一致が積み重なりついに離婚を決意するところから、このドラマは始まります。

 しかし、離婚届を出した後も、ふたりは諸事情により同居生活を続ける羽目に。
そのため、お互いに我慢していた不満やすれ違いの正体が、徐々に暴かれていきます。

 一方、同じ街に住む光生の元カノ・灯里(真木よう子)は、夫の上原諒(綾野剛)が外で浮気を繰り返していることにうすうす気付いていながら、黙って理解のあるフリをしていました。
ところが、なんと彼が灯里との婚姻届を出していなかったことが発覚。
彼女はこれまで我慢していた嫉妬やみじめな気持ちを爆発させ、決定的な破局を迎えます。

 離婚した夫婦と、結婚していなかった夫婦。
このドラマは、どちらもわかり合えずに“夫婦になれなかった”二組の男女が、“なぜ/どうわかり合えなかったのか”についてを、丹念に描いた物語なのです。