カメラの存在を感じない革新的なアクションシーン

悪女/AKUJOレビュー感想 2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & APEITDA. All Rights Reserved.

 あまりに革新的なアクション描写の数々に、「どうやって撮影しているの?」と思わず我に返らずにいられない。
バイクで逆走チェイスをしながら日本刀で斬り合うシーンなど、アニメ表現でも思いつかないようなアクションシーンの限界知らずの挑戦が随所に見られる。人物に極限まで接近して、刀がスクリーンを突き抜けて飛び込んでくるほどのアングルまでとことん追求する。

 まるでカメラの存在を感じない。近年のアクション作品でも見られた『キングスマン』の擬似ワンカット・ワンシーンの臨場感、『ハードコア』の主観映像撮影の発明感。カメラを意識しないことで世界観にのめり込んでいく。
それを持ち合わせながらさらに味付けするのは、韓国映画特有の一線を超えた芝居だ。その表情には怒りの中に哀しみがあり、哀しみの中に切なさがある。
スクヒを演じるキム・オクビンが気が触れそうな極限状態の復讐心を全身に宿らせ、9割のスタントを自ら挑んだという気概が、流れる鮮血をより鮮明に脳裏に焼き付けてくる。

 本作に触れずして、近年のアクション映画は絶対に語れないだろう。

 愛ゆえに人は狂い、狂ったその先にあるものを問いかけてくる。スクヒはいかにして“悪女”になり得たのか。そのラストシーンに戦慄を覚えずにはいられない。

ストーリー

 幼い頃に父親を殺されたスクヒ(キム・オクビン)は、中国朝鮮族マフィアの若頭であるジュンサン(シン・ハギュン)に拾われ、彼のもとで犯罪グループの殺し屋として成長する。やがて二人は惹かれ合い、結婚することに。だが、まもなくジュンサンがソウルの対立組織によって惨殺され、スクヒは復讐に燃えてたった一人で敵のアジトを壊滅させる。

 その後、彼女は国家組織に拘束され、10年後の自由と引き換えに国家専属の暗殺者となる。特訓生活を終えて、晴れて“卒業”した後にジュンサンとの間に生まれた娘・ウネとともに郊外のマンションで新生活を迎える。そこでヒョンス(ソンジュン)と名乗る隣人が現れ、彼は国家組織の監視役としてスクヒに接近していたが、いつしか本気で彼女を愛するようになっていた。
スクヒとヒョンスが惹かれ合っていく中で、スクヒは任務中に思いもよらない人物と出会ってしまう――。


2018年2/10(土)、角川シネマ新宿ほかロードショー!

監督:チョン・ビョンギル
キャスト:キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、キム・ソヒョン
配給:KADOKAWA
原題:THE VILLAINESS/悪女/2017年/韓国映画/124分
URL:「悪女/AKUJO」公式サイト

前売り券
Text/たけうちんぐ

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