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  • 2018.01.11

葬儀での涙の量が供養になるのか?齊藤工の初監督作品『blank13』

家族を捨てて蒸発した“ダメ親父”の葬儀で、13年間会うことのなかった息子たちが知らない、父の様々な側面が浮かび上がる——。齊藤工の長編初監督作品。

ルイの9番目の人生
©2017「blank13」製作委員会

 葬儀は必ず泣かなければいけないものか。その涙の量が先逝く人への供養になるのか。
人の死の悲しみや、命の価値を量れるものなんて存在しない。だけど、その“想い”が分かる時が、かつて生きていた身体が焼かれるその場所にあるのだろう。
それも、13年間のブランクがたった1日で取り戻されるほどに――。

 俳優として『団地』『昼顔』などで高い評価を得て、様々な分野で活躍する齊藤工による長編初監督作品。本人も松田家の長男・ヨシユキ役を演じ、その次男であり主人公・コウジを高橋一生が、コウジの彼女・サオリ役を松岡茉優が務める。
父・松田雅人役をリリー・フランキーが演じ、雅人の葬儀に参列する俳優陣に佐藤二朗、村上淳、神戸浩、川瀬陽太、くっきー(野性爆弾)など個性的な面々が連なる。

「既存のものではない映画」

ルイの9番目の人生
©2017「blank13」製作委員会

 身近な人の“死”という誰にとっても普遍的な題材から、作品は意外な方向に寄り道をする。そのシリアスなムードを裏返すような笑いを含んだりもするが、最終的にはエンディングを飾る曲名の通り『家族の風景』に着地する。

 齊藤工監督は「既存のものではない映画」を目指したという。映画番組の番組MC、短編作品の監督、映画コラムの連載を手掛ける、映画をこよなく愛する齊藤工だからこそ、あえて“映画”の形式をひっくり返した。
役者だからこそ演出できる、芝居の中の“偶然性”。それが台本を超えたリアルとして積み重なることで、葬儀のシーンが強烈な印象を残す。

 前半は過去の回想シーンがメインで、シリアスな借金苦の家族の物語。しかし、後半の葬儀のシーンは現在のそれぞれの姿を切り取り、名バイプレイヤー・佐藤二朗の力技が引っ張る会話劇に発展する。その方向転換に魅了される。
全ての会話に意味など持たない。しかし、普段私たちが会話すること全てに意味などない。そのリアリティが単なるシリアスな物語に収めないのだ。

   

ある一つの側面ではなく、十人十色の側面から。

ルイの9番目の人生
©2017「blank13」製作委員会

「借金を背負って蒸発し、その分、母が昼も夜も働き詰めで工面した」と聞くと、雅人がとんでもないクズ野郎に思える。しかし、参列者の中にその人間性を否定する者は誰一人としていない。知られざる雅人の人となりが見えてくる。
あえて回想シーンで描かずに、個性豊かな参列者の思い出話で“ダメ親父”雅人のキャラクターを造形していく過程から、演者への絶大的な信頼しか感じ取れない。説明的な描写を排除し、断片的に切り取ることで人物像が生々しく浮かび上がらせる。

 生きている人間だって、ある一つの側面だけで語られてもその人の全ては分からない。十人十色の視点から、雅人の人として愛おしい部分や、ただ単にダメな人間ではなくそう思われる理由などが添えられていく。
ケーキでいうと真っ白な体に、様々な彩りでデコレーションされていくようなものだ。いや、借金塗れだった雅人の場合はかなり腐ったカビだらけのケーキかも知れないが、コウジ、ヨシユキの心の中で少しずつ甘みが付け加えられていく。

 高橋一生、松岡茉優、斎藤工という第一線で活躍する俳優たちが、葬式では常に“受け”の芝居をしている所も特徴的だ。時に暴走する参列者の雅人に対するエモーションが、緊張感ある葬式を『笑ってはいけない◯◯』にすら感じられるほど笑いを誘い、死んでしまった人を生きてるかのように身近に感じられる。

 人はいずれ死ぬ。人として生きる以上、誰かに見送られる。葬式に参列する人の“数”ではなく、“想い”こそがその人がこの世に存在していた証明だろう。
どこか欠点があっても憎くても、すでにこの世にいないという事実には負けてしまう。その人のことを知ろうとする時にこそ、“赦し”がある。これは先逝く人すべてに贈るラブレターのようだ。

ストーリー

 多額の借金を背負って蒸発し、13年間行方不明になっていた父・雅人(リリー・フランキー)はガンを患っていた。
すでに余命3ヶ月の雅人の消息を掴んだ次男・コウジ(高橋一生)は病院を訪れ、再会を果たす。だが、家族を捨てて出て行った雅人を、長男・ヨシユキ(斎藤工)と母・洋子(神野三鈴)は会おうとしなかった。

 それから3ヶ月が経ち、それぞれの溝が埋まらないまま雅人はこの世を去る。やがて葬儀当日を迎え、参列した人々の想いから、コウジもヨシユキも知らなかった雅人の姿が明らかになっていく。
取り戻すことのできない13年間の空白が、次第に埋まっていく――。

2/3(土)シネマート新宿にて公開 2/24(土)全国順次公開

監督:齊藤工
キャスト:高橋一生、松岡茉優、斎藤工、リリー・フランキー、神野三鈴、佐藤二朗、大西利空
配給:クロックワークス
2017年/日本映画/70分
URL:『blank13』公式サイト

前売券
Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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