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  • 2018.01.03

9年間で9回死にかけた少年の、知られざる驚愕の真実とは『ルイの9番目の人生』

海辺の崖から転落した少年・ルイは昏睡状態に陥ってしまう。何度も死にかけた彼の運命を、小児神経科医・パスカルが追うことで思いもよらない真実に直面する——。イギリス人作家リズ・ジェンセンによる同名ミステリー小説を映画化。

ルイの9番目の人生
©2015 Drax (Canada) Productions Inc./ Drax Films UK Limited.

 1年間に1回、毎年恒例の行事のように死にかける少年。
このプロットからして、少し現実離れした印象を受けるかも知れない。
しかし、その正体はあまりにも現実的だ。

“家族”を持つ者なら誰もが少なからず持つであろう愛情の飢餓感と、こんなに身近に居るのに互いに理解し合えないという絶望感を刺激してくる。

 イギリス人作家リズ・ジェンセンによる同名小説を、アレクサンドル・アジャ監督が映画化。
アカデミー賞作品『イングリッシュ・ペイシェント』の故アンソニー・ミンゲラ監督が生前映画化を望んでいた企画を、彼の死後、息子で俳優のマックス・ミンゲラがプロデューサー兼脚本家として実現化した。

少年は何を考えているのか、全く分からない。

ルイの9番目の人生
©2015 Drax (Canada) Productions Inc./ Drax Films UK Limited.

 大人びた冷静な視点と、冷酷なまでに正直な物言い。
ミステリアスなムードを醸し出す9歳のルイは、心理カウンセラーや小児神経科医などその道のプロすら頭を抱えるように、何を考えているのか全く分からない。

 母・ナタリーはそんなルイに対し過保護になり、彼を取り巻くすべての危険なものから避けるよう促す。それも無理はなく、9度も死にかけた息子を持つ母としたら当然の話だろう。

 しかし、これは“偶然”と“必然”を何度も行き来する物語だ。ナタリーのもとに届く差出人不明の警告文と、小児神経科医・パスカルがうなされる悪夢。ルイの身近な人にまで不可解な事故が重なり合うことで、この世界の“当然”が疑われていく。その過程が極めてスリリングだ。

ファンタジーとサスペンスの狭間で。

ルイの9番目の人生
©2015 Drax (Canada) Productions Inc./ Drax Films UK Limited.

 ルイは転落した海の生き物たちと心を通わせ、クラゲや深海魚などは地上の束縛からの解放のモチーフであるかのごとく、美しくファンタジックに盛り込まれる。

 事の真相を大人たちが究明していくなかで明らかになる過去。崖から転落後、昏睡状態に陥っているルイという現在。そして、生きるか死ぬかの瀬戸際の曖昧な未来。
それぞれを何度も行き来し、またそれぞれの境界線が不確かで、そこにさらに“妄想”という少年特有の限りないイメージが、隠された謎をより複雑化させる。

 両親とともに行った水族館の記憶から、ルイの心理描写に神秘的な表現が書き加えられる。単なるサスペンスに収まらない要素が、本作のスケールをグッと拡げている。

 愛ゆえに憎しみを持ち、またそれが人と人同士で切っても切れない問題であること。その提示するテーマが最終的に温かな描写で着地し、豊かな色合いで彩られる。

 パスカルが驚愕の真実に辿り着いた時、ルイの運命はいかに――。
鑑賞後は、幾つも張り巡らされた伏線を振り返るためもう一回見返したくなる。

 サスペンスでありながら、どこか心が満たされるエンディング。果たして、ルイに10番目の人生はやって来るのだろうか。

ストーリー

 生まれてから毎年死にかける事故に遭い続ける少年・ルイ(エイダン・ロングワース)は、9歳の誕生日に海辺の崖から転落して奇跡的に命は助かるが、昏睡状態に陥ってしまう。
担当医・パスカル(ジェイミー・ドーナン)が彼を目覚めさそうと奔走する一方、ルイを取り巻く大人たちの間で不可解な出来事が起き続ける。
ルイの父・ピーター(アーロン・ポール)は行方不明になり、母・ナタリー(サラ・ガドン)のもとには差出人不明の警告文が届き、その真相を追うパスカルもまた不気味な悪夢に悩まされる――。

1月20日(土)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督:アレクサンドル・アジャ
脚本:マックス・ミンゲラ
キャスト:ジェイミー・ドーナン、サラ・ガドン、エイダン・ロングワース、アーロン・ポール
配給:松竹
原題:THE NINTH LIFE OF LOUIS DRAX/2015年/カナダ=イギリス映画/108分
URL:『ルイの9番目の人生』公式サイト

前売券

Text/たけうちんぐ

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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