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  • 2016.12.17

『百円の恋』脚本家が初監督!男子の“おっぱい”への想いがつまった“性春”ストーリー『14の夜』

学校は冴えない。父親はカッコ悪い。友達も俺もダサい。そんな悶々とした14歳のタカシの耳に「町に一軒しかないビデオ屋にAV女優がサイン会にやって来る」という情報が入り、刺激的な夜を明かすことになる——大ヒット作品『百円の恋』の脚本家・足立紳の監督デビュー作

たけうちんぐ 映画 14の夜 足立紳 犬飼直紀 濱田マリ 門脇麦 和田正人 浅川梨奈 SUPER☆GiRLS ガダルカナル・タカ 光石研
© 2016「14の夜」製作委員会

 それは想像していたよりも“地獄”だった。単なる童貞少年の鬱屈した日常をイメージしていると不意を突かれる。
その“地獄”はもちろん命に別状はない。ただ、14歳の世界がいかに狭いか思い知らされるのだ。
思春期は小さな挫折を絶望に感じ、僅かな喜びを幸福を覚える。そんなタカシの地獄から救ってくれる唯一の希望は、「おっぱい」だったのだ。

『百円の恋』で第39回日本アカデミー賞・最優秀脚本賞などあらゆる映画賞を受賞した脚本家・足立紳の初監督作品。
主人公・タカシ役にオーディションから選ばれた新人・犬飼直紀、ダメ親父役に光石研、その妻役に濱田マリ、ヤンキーの“巨乳”同級生のメグミ役にSUPER☆GiRLSの浅川梨奈といった個性豊かな面々が、1987年の田舎町を舞台にした中学生男子の“地獄”から“性春”への逃避行を色鮮やかに彩る。

おっぱいこそが別世界に連れていってくれるファンタジー

たけうちんぐ 映画 14の夜 足立紳 犬飼直紀 濱田マリ 門脇麦 和田正人 浅川梨奈 SUPER☆GiRLS ガダルカナル・タカ 光石研
© 2016「14の夜」製作委員会

 タカシの絶望の多くは父・忠雄のダメっぷりにある。一番尊敬したいはずの人物が一番最悪なことが、良い塩梅に地獄を与えてくれる。特に姉・春子が連れてきた婚約相手との一家団欒シーンのぶち壊しっぷりがたまらない。
松田聖子やジャッキー・チェンなど時代を感じさせる固有名詞が飛び交う中、見ている分には爆笑。そこに居る分には地獄。そんな救いようのない日常が繰り出される。
ここから逃げ出したい。だが、現実逃避をするにも旅ができるような環境にない。そうなるともはやおっぱいしかない。幼馴染のメグミの、AV女優の、その豊満なおっぱいこそがタカシを別世界に連れていってくれるファンタジーなのだ。

 ミツル、サトシ、竹内の冴えない仲間たちの会話もまた、どうしようもない性欲とどうでもいい見栄が入り乱れて苦笑する。ある意味、彼らが童貞であることが何よりも救いに思える。全てを知ってしまうより、女性への夢を持つことがこの田舎町の世界を広げている。
AV女優のサイン会でAV女優のおっぱいを揉むことがまるで何かのワールドカップのような、アカデミー賞のような、史上最高の勲章にしか見えていないのが良い意味でも悪い意味でも泣けてくる。

14歳のアナログな“性”春が持つエモーション

たけうちんぐ 映画 14の夜 足立紳 犬飼直紀 濱田マリ 門脇麦 和田正人 浅川梨奈 SUPER☆GiRLS ガダルカナル・タカ 光石研
© 2016「14の夜」製作委員会

 ここまでおっぱいに切実な想いを感じる作品は初めて。タカシはおっぱいを揉むと世界が変わる。革命が起きる。人生が良くなる。それを本気で信じている。きっと揉めば不良から慕われて、仲間から敬まれて、この最低な世界から解放される。その本気は引きで見るとシュールでバカバカしいが、寄って見ると、涙が浮かぶほど必死なタカシがいる。
単なる男の子の性欲を超えて、誰からも鼻で笑われるような情熱に触れる。おっぱいに手を伸ばそうとする14歳の少年に、ここまで胸が熱くなるとは思わない。

「ほら、揉めよ!」「揉め!揉めよ!」「うおおおお!」…こんな字面からはまるで想像ができないエモーションが、映像の中で炸裂する。男の子がいかにおっぱいにロマンを感じているかが手に取るように分かる。
テープが擦り切れたVHSはもう再生できない。実家の押入れの奥底にひっそり身を潜めている思い出のように、それはDVDやブルーレイでは決して味わえない。14歳のアナログな“性”春を、ぜひスクリーンで感じ取ってみてほしい。

 この作品がまたクリスマスイブに公開初日を迎えることが素晴らしい皮肉に思えてくる。
その日が聖なる夜ならぬ“性”なる夜であるからこそ、他人からバカにされても必死に突き進むタカシの想いが成仏できるだろう。

ストーリー

 1987年の田舎町。中学生のタカシ(犬飼直紀)はダサい父・忠雄(光石研)が鬱陶しくてたまらない。町を歩くと絡んでくるヤンキーたちが嫌いで、何よりも鬱屈したこの日常が嫌い。それでも、隣に住む同級生のメグミ(浅川梨奈)が気になっている。柔道部の仲間たちと町に一軒しかないレンタルビデオ屋に入り浸り、悶々とした日々を過ごす。

 そんな中、AV女優の“よくしまる今日子”がサイン会にやって来るという噂を耳にする。「深夜0時を過ぎると、おっぱいを揉ませてくれるらしい」大きな夢を抱いて駆けつけるが、タカシは思いもよらない事態に直面する――。

12月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

監督・脚本:足立紳(『百円の恋』
キャスト:犬飼直紀、濱田マリ、門脇麦、和田正人、浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)、健太郎、青木柚、中島来星、河口瑛将、稲川実代子、後藤ユウミ、駒木根隆介、内田慈、坂田聡、宇野祥平、ガダルカナル・タカ/光石研
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
2016年/日本映画/114分/PG-12
URL:公式サイト

Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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