死ぬまでには観ておきたい映画のこと

「21歳で女は終わる」美しいモデルの光と闇を映した衝撃作『ネオン・デーモン』

16歳のジェシーはトップモデルの夢を叶えるために田舎町からロスへやって来た。チャンスを掴んでいく中、嫉妬心を燃やすライバルたちが彼女を引きずり降ろそうとする——。『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作。

たけうちんぐ 映画 ネオン・デーモン ニコラス・ウィンディング・レフン エル・ファニング キアヌ・リーブス  ジェナ・マローン 
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 本当に恐ろしい。見終わった後、その美しさと危うさのギャップに思わず言葉を失う。
それは怪物や幽霊にも勝っている。女のプライドが立ちはだかる。ジェラシーが入り混じる。そこには、閃光と鮮血に塗れた“悪魔”が誕生しているのだ。

 2016年度のカンヌ映画祭で賛否両論を巻き起こした、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督の最新作。主人公ジェシーをエル・ファニングが演じ、 ジェナ・マローン、アビー・リー、カール・グルスマン、キアヌ・リーブスらがキャストに名を連ねる。

 

冷え切った視点で美しい肢体を切り取る

たけうちんぐ 映画 ネオン・デーモン ニコラス・ウィンディング・レフン エル・ファニング キアヌ・リーブス  ジェナ・マローン
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 覗いてはいけない世界を覗いてしまった。それも向こうに見つかった気がしてヒヤヒヤする。カメラを見つめるジェシーの視線がスクリーンを突き破り、「あなたもそうだろう?」と問いかけてくるかのようだ。

 世の中が憧れる、このモデル業界では、“21歳で女は終わる”という誰も聞きたくない定義が常識の一つだ。美への執着が蟻地獄のように女たちを巻き込んでいく。
彼女たちの出口を奪うのはプライドとジェラシー。時間が経つとあっさり立ち位置を失う世界だ。ジェシーの成功に舌打ちするモデルたちの切実な想いが、彼女たちを心に武器を持つ悪役に変えていく。

 カメラが冷え切っている。レフン監督の切り取る映像が、人が本来持っているはずの体温を完全に消し去る。そこに残るのは美しい肢体と汚い感情のみ。あくまで造形美として映す。それによって本来の意味の“美”を観客に問いかける。
息を止めるくらい緊張感溢れるカットの連続は、一枚一枚が写真のように時間を止めて言葉を失くしている。
それはとてつもなく甘美で、思わず酔いしれる。まるで騙されているのが分かっているのにあえて行くような気持ちに陥るのだ。