園監督にしか映せない、究極の“自我”がここに!アナーキーすぎる問題作『アンチポルノ』

人気女流作家・京子は分刻みのスケジュールの中、その苛立ちをマネージャー・典子にサディスティックにぶつける。でも、それは現実? 私はここに生きているの?——全ての“自我”に問い掛ける園子温監督最新作。

たけうちんぐ 映画 安置ポルノ 園子温 日活ロマンポルノ 冨手麻妙 筒井真理子
© 2016日活

 生きている間に人はどれだけ嘘をつき、作り笑いを浮かべるのだろう。そこに自分自身の人生は存在するのだろうか。
京子は寝ても覚めても終わらない悪夢にうなされて、今日も“お芝居”を続けている。
爆笑、吐き気、絶望、陶酔を繰り返す。まるで二日酔いのような彼女の姿は、あなたにとって完全に“他人”と言えるだろうか?

 日活ロマンポルノリブート企画の第4弾として作られた、『冷たい熱帯魚』『地獄でなぜ悪い』の園子温監督が脚本を書き下ろした完全オリジナルの最新作。園監督が見出した新しいミューズ・冨手麻妙が裸上等で女流作家・京子を全身全霊で演じる。相手役のマネージャー・典子は実力派女優の筒井真理子。
極彩色に彩られたファンタジックな世界観と、アナーキーで危うい物語。その舞台で園監督は現代に生きる人々がもがき苦しむ“自我”というテーマを浮き彫りにする。

 

“作られた”世界に京子がいる

たけうちんぐ 映画 安置ポルノ 園子温 日活ロマンポルノ 冨手麻妙 筒井真理子
© 2016日活

 正直、最初は京子についていけなかった。マネージャー・典子を奴隷のように扱う様が憎らしく、ナチュラルハイに出来上がった姿を見せ続けられても、ただ単に痛々しい。言葉は汚く、行動は荒々しい。共感も同情も一つも生まれない。シンプルな舞台セットで独壇場を見せられているようで、その世界につま先すら入り込めなかった。

 だが、その全てに意味があった。途中から天変地異を起こす。物語中盤の《仕掛け》によってガラリと世界を変えて、一気に没頭させる展開に入り込む。京子の嘘くささも舞台の簡素さも、その全てが必要不可欠な要素だった。

 京子は成功者だ。お金にも名声にも困らない。近づいてくる者は皆笑顔を見せ、彼女に好かれるように美辞麗句を並べる。その全てが芝居じみたセリフと、嘘で塗り固められた人物相関図。彼女が戸惑うのも無理はない。全てが作られた世界のようで、用意されたキャラクターのようだ。
映画の内外から京子を見つめていく展開に、共感と同情を一気に集めていく。自我を破綻させて赤裸々に感情をぶつけていく姿から、観ていると心の中に京子を宿らせていく。