“フランス版ウディ・アレン”と呼べる、シニカルな結末とは

 マルタンの想像とはかけ離れて、ボヴァリーはただ愛を欲している。絶望に打ちひしがれることもなく、ひたすら優雅に新しい愛を求めている。それはアバズレ女としてではなく、純粋な愛の衝動として。

 彼女が自殺するか否か。それはマルタンの妄想通りになるか否かであるが、「事実は小説よりも奇なり」。
まさにこの言葉が該当し、誰もが驚く結末が待ち構えている。条件や環境が整ったせいで男の妄想はますます肥大し、黒い笑いに溢れた結末に度肝を抜く。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと ボヴァリー夫人とパン屋 (C) 2014 – Albertine Productions – Cine-@ – Gaumont – Cinefrance 1888 – France 2 Cinema – British Film Institute

 乱暴に言い表すと“フランス版ウディ・アレン”
妄想も想像も遥かに越えたシニカルな展開に、ため息まじりに笑うしかない。

 ボヴァリーと同じく、マルタンも心のどこかで愛を求めているのかも知れない。
平穏な日々は素晴らしいように見えて、とても退屈。誰でも生活の中に小説のようなドラマを求める。

 しかし、小説のような切なくて甘い恋物語を期待すると、マルタンのように壮絶な最後を迎えてしまうのかもしれません。

7月上旬、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

監督:アンヌ・フォンテーヌ
キャスト:ファブリス・ルキーニ、ジェマ・アータートン、ジェイソン・フレミング、ニール・シュナイダー、イザベル・カンディエ
配給:クロックワークス
原題:Gemma Bovery/2014年/フランス映画/99分
(C) 2014 – Albertine Productions – Cine-@ – Gaumont – Cinefrance 1888 – France 2 Cinema – British Film Institute

Text/たけうちんぐ