嫌われ者ちゃんと人気者くんの恋

 だけどなぜか私たちは、日に日に仲良くなっていった。

 一緒に過ごす時間も長くなり、放課後の生徒会室や朝の公園、休日の図書館で、いろんな話をした。そしていつの間にか、恋人同士になった。

 もの静かな人気者と学年きっての嫌われ者が付き合ったことは、同級生たちにとってかなり奇妙な出来事だったに違いない。一緒にいるところをヘンな目で見られることもしばしばあり、私たちは人目を避けるように学校の周囲にさまざまな隠れ場所を見つけ、いかにもな青春を過ごした。

 だから彼には一度、真意を訊ねてみたいと思っていた。

「そもそもあの頃、どうして私と付き合おうと思ったの?」と。
彼の返答は、まるで意外なものだった。

「眞駒がみんなに嫌われていたから。反骨精神みたいなもの」

「……エッ? 反骨精神?!」

「みんな眞駒のことをよく知りもしないくせに、好き勝手に悪口を言って盛り上がってた。僕は、そんな友人たちのことを見下していた。だから、そんなやつらと自分は違うと思っていたし、彼らが知らない、知ろうとしないことを自分は知っているという優越感に浸りたかった」

 もう苦笑いするしかなかった。私は嫌われていた“のに”好いてもらったのではなく、嫌われていた“からこそ”好いてもらったのだ。

 そんな度胸試しのようなロックンロール思考で私と恋愛しないでくれ! 普通はさあ、もっとこう、笑顔がカワイイからとか、部活を頑張ってる姿がステキだったとか、そういう腑抜けた理由で恋に落ちるもんじゃないのか。

 しかし同時に、穏やかで明るく、何も考えてなさそうだった当時の彼が、そんな鬱屈した内面を抱えていたことに驚いた。

人気者くんの隠れた一面

 今になって思うと、彼にはたしかにちょっと変わっているところがあった。

 みんなと共通の話題で盛り上がりはするけれど本当に好きなものはちゃんと他にあって、それは誰も知らないようなものだったりした。

 彼は自分のことをあまり人に話さなかったし、知ってもらいたいとも思っていないようだった。そのくせ他人の何気ないクセや、言動から読み取れる感情を深く観察していたり、クラスの多数派の意見とは全然違う視点をコッソリ持っていたりした。すこし遠くから冷めた目で集団を眺めているような姿勢に、私はややギョッとしたものだった。

 もしかしたら彼は、自分を取り巻く人間関係や空気や社会に、ずっと違和感を抱いていたのかもしれない。

 でも彼は、恋人である私にだけはいろんなことを話してくれた。これは初めて人に話すんだけど、と前置きしながら家族のことや幼少の思い出、好きな本や歌のこと、辛かった記憶や悔しかった出来事なんかを、ぽつぽつと嬉しそうに話した。私も、彼にだけ話したことがたくさんあった。私の言葉に彼は喜んで耳を傾けて、まっすぐに受け止めてくれた。そうして時間を共に過ごすうちに、意外に似ているところがあることにも気づいた。だからこそ私たちは、どんな友達よりもお互いのことを知って、仲良くなれたのだった。