時間をワープさせて冷静に戻る

そんな状況で理性を取り戻す方法は、時間をワープさせるしかありません。もっともベストは寝ること。けれど、神経が昂った状況で寝付くのはなかなか難しい。そういったときに気を紛らわす助けになるのが映画や読書です。もちろん好きな人はゲームでもいいけれど、とにかく集中して、一旦現実から離れる。

また、友達を呼び出して飲みに行くというのもひとつの手。が、あんまり夫婦喧嘩の話ばかりをしているとウンザリされるので、「話題のひとつとして、喧嘩のことも話すけど、一度その話題を終えたらぶり返さない」を心掛ける。あと酒を飲む場合、中途半端だとアルコールで枷が外れて衝動性を抑えきれなくなってしまい、元も子もなくなってしまうので、飲むなら中途半端ではなく、自宅に帰ってゲロを吐いて即気絶してしまうくらいのレベルを目指したい。

そうこうして、一晩だけ耐えるのです。「明けない夜はない、朝は来る」と念じて。

不思議なことに翌朝になって太陽が昇ると、不安と衝動はすっきりさっぱりと消え去っていて、「昨日はなんで、あんなに悶えていたんだろう」と思うと同時に「ああ、パートナーにうっかり追い絡みしなくてよかったわ~!」と安心します。すっかり冷静になった後に客観的にみると、頭に血が昇っていたときの自分は、やっぱりちょっと極端な思考に支配されているように思える。

こうして、すっかり冷めたところで、仕切り直しとして、「昨日はごめん」と謝った後に、冷静に相手に自分の気持ちを伝えれば、相手もまた冷静に対処をしてくれる。こうして無事に夫婦喧嘩の仲直り完了です。さらにはこの実績が――今回、感情の大爆発を抑え込むことができたのだから、また次の喧嘩のときも、上手に気持ちを冷却できるはずだという――自信へとつながる。感情の冷却が苦手だった元恋人に、これが伝えられたらいいのに。

Text/大泉りか