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  • 2017.12.30

守られなかった「2年経ったら結婚」という約束…お金のない彼と海辺の町へ

どんなに喧嘩が多くても彼氏と別れなかった大泉さん。彼の「2年経ったら結婚しよう」という言葉を信じていたからです。希望を持ち続けていた大泉さんは結局、6年間も彼氏に縛られることになりました。「2年経ったら結婚」という言葉は希望ではなく、別れられない呪いだったのです。

守られなかった「2年経ったら結婚」という約束

湘南のが蔵王
by Josh Sorenson

 先週書いた、結婚というマイルストーンが2年後に置かれた2006年の冬。彼と付き合った当初は26歳だったわたしは、誕生日を越して29歳になっていました。その2年と少しの間に処女作の小説を1冊出版することが出来たものの、さして売れることなく、新刊が出ることもなく、常駐フリーランスとして受けていた編集部の仕事もずいぶんと飽きがきていて、何か人生に新しい展開を求めていました。

 最初はしんどかった恋人の束縛も、付き合ううちにほどよく慣れてきて、

「飲みに行く用事がある日は、あえて連絡しない」
「飲みに行ったことを報告しない」
「飲みに行ってる最中に電話がかかってきたら、仕事の途中を抜けて同僚とご飯を食べているふりをする」

 といったふうに、あえて刺激を与えないことで切り抜ける術を身に着けていました。だから、彼の「いまは付き合い始めだから、お互いのちょうどいい距離感がわからないで喧嘩ばかりだけど、たぶんそのうちわかってくるよ」という言葉通り、“ちょうどいい距離”で付き合えているように思えました。

 この頃、一番面倒くさかったのは、会う度に母親が「いつ結婚をするんだ」と急かしてくることでした。「わたしがしたい時にするから、放っておいて」とハッキリと言えるようならばなんの問題もなかったと思うのですが、30歳手前になってもわたしは娘気分で、だから親の言いつけを守らなくてはならないと思っていました。

 しかし彼は「2年」という約束をすっかり忘れたかのように、結婚について口にすることはありませんでした。けれど、その理由をわたしはなんとなくわかっていました。付き合ってから知ったことでしたが、彼には少なくない借金があって、それが結婚を躊躇させているように思えたのです。

新しい展開が欲しくて湘南

 そんな折、ちょうど彼のマンションの更新が近づいていることを聞きました。「更新するお金あるの?」と尋ねると、「ないけど、なんとかなるんじゃない?」という答えが返ってきました。

 ここで更新をしたら、今度2年間、彼が引っ越すのは難しくなります。新宿から歩いて帰れる場所での一人暮らしも十分に堪能して、気も済んでいました。むしろ、人生に新しい展開が欲しい。そう考えたわたしは、彼に一緒に住むことを提案しました。

 彼の職場は横浜だったので、最初は東横線か京浜東北線沿線のどこかに住もうという話になりました。けれどもわたしは、栄えていない街で、かつ駅から遠い場所に住むのが嫌でした。そうすると、東横線なら都内、京浜東北線なら川崎辺りが希望だけれど、彼の経済状態では東横線沿線の都内で駅近は難しい。

 となると、選択肢は川崎……と思ったところで、いっそ湘南まで行ってしまうのはどうかと思いつきました。田舎町に住んだことはないし、都会が好きだけれど、海の近くとなれば話は別。なんだか素敵な暮らしが待っていそうな気がします。お金のない彼と余暇を過ごすのに、海以上にもってこいの場所があるでしょうか。

 いい思いつきだと思いました。こうしてわたしは30歳を手前にして、湘南へと引っ越したのでした。


――次週へ続く


Text/大泉りか

次回は<恋と愛と性を結婚相手ひとりに求めるのは無理なことだったのか?>です。
2007年春、湘南へと引越した大泉りかさん。海辺での素敵な同棲生活が始まり、二転三転しながらも結婚式と入籍の予定が立ったころ、2人の目の前には「セックスレス」というひとつの問題が立ちはだかっていました。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。
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